恋に落ちたのは、きっとあの夏の日だった–––。



「ほんとに一人で帰れるの、愛菜(あいな)?やっぱり何かあってからじゃ心配だから、家まで送っていくわよ」


「大丈夫だって、カナちゃん!カナちゃんこそ用事があるから早くしないとなんでしょ?私は半日オフをさっさと家に帰って満喫するので、ご心配なくー」



お母さんの妹、つまり叔母である佳菜子(かなこ)、通称カナちゃんに笑顔でひらひらと手を振る。



私、高城(たかしろ)愛菜はまだ十六歳の高校生ながらにして、モデル兼女優をやっている。


きっかけは私のことを生まれた時から溺愛してくれていたカナちゃんが、まだ私が五歳の頃に思いつきでモデル事務所に応募したところ、あれよあれよと言う間にデビューしてしまったのだ。


「愛菜の可愛さを全国に広めてやる」というそんな叔母バカなカナちゃんが、元からやっていたテレビ関係のスタッフをやめて今ではマネージャーとして私をサポートしてくれている。


最初はモデル業だけだったのが、一年くらい前からちょっとした役でドラマや映画にも出演させてもらい、ついにこの前ヒロイン役として映画撮影が決まったのだ。



カナちゃんは本当に私を大切にしてくれているし、駅から家に帰るだけでも私がさらわれないかとそんなバカみたいな心配をしてくれている。