みんなの反応だって気になるし、余計に緊張してしまう。
「大丈夫だよママ。あたち、ママと同じステージに立ててすごく嬉しい!」

親子共演なんて、令和の日本では絶対にできなかった。

私のお母さんは私が幼い頃に死んでしまったから、願っても願っても、かなわない夢だったから。

「エメラルドは緊張してないの?」
そう聞かれて私はママの右手を自分の胸へと持ってきた。

トクントクントクンと、いつもより早い心臓に自分自身も気がついていた。
だけどそれは嫌な緊張感じゃない。

これからはじまるステージを楽しみたいという気持ちと、期待と、少しの不安からなっている。
「最初は誰だって緊張するよ。だけど大丈夫。あたちとママなら、きっとうまくいくから!」

私はママに笑いかける。
めいいっぱいのアイドルスマイルを。

するとママの頬がふにゃりと緩んだ。
緊張が解けてその目には私しか映っていない。

今だ!
「ママ、行くよ!」

私はママの手を掴んで、低いステージの上へとあがっていたのだった。