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「なんの騒ぎだ?」
夕方近くになると中庭にはテーブルや椅子が出されて、料理や飲み物が運ばれてきた。

それを見たマルセルが目を丸くしている。
「さぁ……なにかしら?」

半歩後ろを歩くフーリアも足を止めて中庭の様子に見入っている。
普段はあまり目を合わせることもない使用人たちが慌ただしく動き回っている。

それに、みんなとても楽しそうなのだ。
「あ、アルセルおじちゃんとフーリアおばちゃん!」

中庭の中央で指揮を取っていた私がふたりに気がついて駆け寄った。

今は動きやすい格好をしているけれど、ステージに上がるときにはもっとフリルがふんだんに使われている衣装に着替えるつもりだ。
「エメラルド、これはどういうことだい?」

私が近づいていくとマルセルは頬を緩めてしゃがみ込んだ。
こうして見ているだけでもマルセルが子供好きだということがよくわかる。