「どうしてだ? 今まででは考えられないじゃないか」
いくら城内で使用人の立場が低いとはいえ、陰口を抑えることはできない。

エレーヌの性悪な噂話は当然マルセルの耳にも入ってきていた。
だからこそ自分の妻であるフーリアの身を案じていたのだ。

「わかりません。もしかしたらなにかを企てている可能性も……」
側近が周囲を見回してエメラルドの愛犬しかいないことを確認してからそう答えた。

「企て? あの女が企てることといえば我妻を陥れることに決まっている」
マルセルの声が怒りで震えて顔が赤く染まっていく。

「少し早いが今夜計画を実行する。フーリアの身が危ない」
それを聞いたプルーは大急ぎでエメラルドの元へと走ったのだった。