その言葉に私はうーんと唸り声を上げた。
この世界にもダンスはあるけれど、それは武道会などという厳粛なパーティーのときのものだ。

令和の日本のアイドルがやっていたような、ダンスとは違ってあくまで社交の場所でやるものだった。
「城内で歌って踊ることで暗殺を回避できると思う?」

「できる。と、俺は思ってる」
「どうして?」

パーティー以外でダンスしている妃なんて見たことも聞いたこともない。
そこまで破天荒っぷりを発揮すれば逆に怪しまれてしまいそうだ。

「いい意味で注目されることで、簡単には近づけなくなるからだ。幸いにも今のエレーヌは好感度が徐々に上がってきている。そのタイミングで娘と一緒に歌って踊る姿を披露すれば、みんなが釘付けになる」

「ちょっと待って! 今娘と一緒にって言った?」
驚きて聞き返すとプルーは大きく首を縦に振って見せた。