私はまた何度も頷いた。
これ以上どう説明していいかわからない。

「つまりエメラルドは、ママにみんなから愛される人になってほしいってことなの?」
「そう! そうだよママ! あたちの願いはママが愛されること! お金とか地位とか、そういうのはいらないの!」

ようやく通じた気持ちが嬉しくてまくしたてるように説明した。
するとママはしばらく考え込むようにうつむいていたけれど、顔を上げたときには満面の笑顔だった。

「お金より地位より、愛される人生か……。そんなの考えたこともなかったなぁ」
もとより一国の姫として産まれたママは姫のしての厳格な教育の中育てられた。

愛とか友情とか言う暇もなくおとなになり、自分の国を少しでも大きくするために決められた結婚をした。
そして、それを当たり前のこととして受け入れてきた。

だからこそ、自分の娘にも同じような教育を施せばきっといい未来が待っていると信じているのだ。
「そういう人生もいいかもしれないね」

ママが笑う。
それは花が目覚めたときのように美しくて、唯一無二のものだった。