そこには大きな威厳が存在しているんだろう。

アイドルとしての威厳とは少し違う、完璧でなければならない威厳はママの美しさを打ち消してしまう怖さとして周囲に認識されているんじゃないだろうか。

「大丈夫だよママ。人と合うときには笑顔を意識して、時には使用人さんたちと立ち話をするのもいいかも」
私からの提案にママが目をクルリと回した。

とても信じられない言葉だったからだろう。
自分の側近となら多少のムダ話をしても、城内にいる使用人と会話などめったにするものじゃないから。

「エメラルド。最近なんだかママに変なことばかり言ってくるけれど、どうしたの? ライムになにか言われた?」

「な、なにも言われてないよ!」
私は慌てて左右に首をふる。
ライムとは10歳の私の侍女のことだ。