☆☆☆

「ママ、歩く時は背筋をまっすぐに。って、それはもうできてるか。ときには転けそうになったりしてもいいかも」

「転けそうになる?」
Aラインの真っ白なドレスを着たママが怪訝そうな顔をこちらへ向ける。

今、私はママとパパの部屋に来ていた。
ここは私の部屋の何倍も広さがあり、衣装の入ったクローゼットだけでも一部屋分は軽くありそうだ。

置かれている家具ひとつひとつも高級品で、触れることもためらわれてしまうようなものばかり。
ちなみち、パパは今仕事で外出中だった。

「そうだよ。ママだって人間なんだから、人間らしいところを見せていいと思うよ?」
「だけどそんなことをしたら威厳がなくなってしまうわ」

そう言われて胸の中でハッと来るものがあった。
城内では常に妃という立場で振る舞っているママ。