「わふっ」
そんな声に視線を向けると緑の茂る芝の上をこちらへ掛けてくる白いムク犬の姿がある。

毛の長すぎて目が隠れているけれど、当人は気にする様子もなく、まっすぐに私のところへやってきてしっぽを振っている。

「プルー。水遊びをしていたの?」

プルーの長い毛が一部濡れているのを見て、すぐに噴水で遊んできたのだと気がついて、たどたどしい言葉で質問をした。

プルーはしっぽをふりながら「わふっ」と返事をする。
私はプルーの背中をなでながら、またママにあーんしてもらっておやつを楽しむ。

こんななに不自由ない生活に慣れてきたのは、実はほんの数ヶ月前のことだ。
その日まで私は令和6年に生きていて、しかも16歳で天才アイドルと称される仕事をしていた。

私のアイドル人生はまだまだこれから。

そう思っていた矢先に、ライブ会場へ向かう途中で大きな交通事故に巻き込まれてしまい、あっけなく死亡。