ここは城内だから安全だけれど、この城には様々な思惑が渦巻いていることをすでに知っていた。
ママの企てがその中のひとつであることも。

「このままじゃフーリアが可哀想すぎる」
この声はマルセル?

聞き覚えのある伯父の声に身を固くする。
プルーもさっきから伏せの体勢で耳だけそばだてている。

「私もそう思います」
答えたのはきっとマルセルの側近の声だ。

常にマルセルの横にいて、とても優秀な人らしい。
ふたりとも私には優しくしてくれうけれど、やはりエレーヌへの風当たりは強かった。

「フーリアはエレーヌになにかしたのか?」
ママの名前が出て体がビクリと反応してしまう。

プルーが軽く目配せをしてきて『落ち着け』と言っているのがわかった。
「特になにも情報は入ってきていません。単に、フーリア様を追い出したいのかと思います」