「それは、わたくしたちの情報がそちらに漏れているということかしら?」

「いえ、漏れているといいますか……、どうしましょう。主からは特に何の命令も下されていないんですよねぇ。何と答えればいいことか」

「簡単よ、正直に答えればいいの。そちらが知っていること、全てを」

「いやぁ、そういってもねぇ。そうしてはいけないことくらい、貴女(あなた)も分かっているでしょうに」

「まぁ、お互い部下の立場ですものね。どうせわたくしのこともお兄様のことも把握しているんでしょう?」

「もちろんですよ! 夜高家の部下の一族である黒土家の長女、柊葭さまでしょう!」


 柊葭が質問をしている間に、霜歌、濤歌、柊都の3人は男の外見を観察する。
 といっても、男は白いマントのような布をかぶっているため、あまり注意ができない。


 と、空いていた扉から風が吹き込み、一瞬だけ男の布が(めく)り上がった。


 その一瞬の間で霜歌が見た男の顔は、整ったものだった。
 ――というか、あの顔は……。

「お久しぶりです、夜来(やらい)さん。父の部下のあなたが、なぜここにいるんです?」

 霜歌が問うより先に濤歌が口を開いた。

「これは、父に対する――夜高家に対する反逆行為と考えてもいいですか?」


「わぁ、ばれちゃいましたか。貴女がたは昔から聡いですねぇ」

「それは自白と捉えてもいいですか?」

「うぅーん、わたしからは何とも言えませんねぇ。主から許可を頂けておりませんので」

 では、と霜歌が濤歌の言葉を引き継ぐ。

「お前のいう主とは、我が父のことであるか?」

「ん-、内緒です」

「お前は誰の命でここに来た」

「それも内緒ですねぇ。ですが我が主は、貴女様がたに正体が知られたくないようでありますよ?」