『夜高(よだか)グループの情報が盗まれた。暗殺部隊は情報部隊と速やかに合流し、首謀者を捕らえろ。罪を犯した者は暗殺部隊により情報を聞き出した後、今すぐ始末しろ』――。


 暗殺部隊の総代・夜高霜歌(そうか)がその情報を受け取ったのは双子の姉の濤歌(とうか)と共に立ち寄った駅前の本屋でだった。

 霜歌と濤歌は白髪で、霜歌は右に髪を一房たらし左耳にピアスをつけている。濤歌はその逆で、二人のフランス人形のような整った顔立ちはとても似ていた。相違点といえば、濤歌の方が少しくせ毛なことぐらいだろうか。

 急いで――けれど自然に本屋から出た二人は人気のない場所に向かい、首の詰まった中華風ワンピースのような黒の仕事服に着替えた。袖元はふわりと広がっており、その中に道具(ぶき)が入っているのだ。

 幹部との待ち合わせ場所に向かう道中、双子の姉妹は仕事の話をしていた。

「濤。今回の件、誰が一枚噛んでいると思う?」
「分からない。そもそも、ウチの情報を盗むなんて、よっぽどの手練れでしょう?」
「でも、国内にそんな者がいるなんて報告、私受けてない」
「わたしもよ。……とりあえず、それも含めて二人から内容を聞きましょうか」


 待ち合わせ場所の廃倉庫の前には部下の兄妹、黒土(くろと)柊都(しゅうと)柊葭(しゅうか)が霜歌たちと似たような服を着て待っていた。

 二人が立つ古びた倉庫の中から見知らぬ者の気配を感じた。


「しゅう、うか、お疲れ。例の人物はこの中に?」
「お疲れ様です、そう。先ほど、柊葭と捕らえたので現在は眠らせております」
「オッケー了解。じゃあ、霜、聞き出ししよっか」
「うかはついてきて。しゅうは見張りをお願い」
「では、わたくしは情報部隊に送る動画を撮影しておくわ」


 霜歌にしゅうと呼ばれた兄は気配を消し、廃倉庫の上に立ち、周囲の気配を探る。
 うかと呼ばれた妹はグループから支給されているスマホを取り出し、連絡・報告用のアプリを立ち上げた。彼女の胸元についているブローチと接続し、搭載されているカメラとマイクの映像が情報部隊に届いていることを確認すると、倉庫の扉を開けた。