おばあちゃんのお葬式の日
僕は涙が出なかった。

いとこのたいがと
おばあちゃんの家にあずけられたとき
ぼくはたいがにいじめられて
おもちゃもさわらせてもらえなかった。
僕は玄関でおびえていた。

きょうはもうひとりの
おばあちゃんのお葬式

養子としてあずけられた
いえのおばあちゃんの。

久しぶりに会った
義理の妹のしおちゃんは
また綺麗になっていた。

ぼくは、しおちゃんの顔をみた
しおちゃんは無表情だが
なぜだかすこし安心したようだった

「ねえしおちゃん
どうして泣かないの?」

しおちゃんは言った
「わたし、ずっとこの日に怯えてた
それに、おばあちゃんの遺産も入るし
家もあるから……」

中学を出てすぐのしおちゃんは、今日から一人暮らしだった。

「僕も、本当のおばあちゃんが死んだ時、泣かなかったんだ」

「そうなんだ」

「うん」

「例の玄関の話?」

「うん」

「がんばろ?かずくん。
わたしたちそれでも、中学を
卒業できたよ」

「そうだね……」

「ずっと、かずくんのこと
考えるよ」

「ありがとう」

「大人が、かずくんを過去にいじめても、わたしはあなたのみかただから」

僕たちは千葉と京都と離れ離れになった。
僕は、お父さんと2人
紫織は、ひとりでアルバイト生活。

この時に交わした言葉が
僕の胸で、支えになっていったのだ。