「いや、だって……カッコ悪いし……」

「そんなことありませんよ。一生懸命になってくれたんですから。それに、あの時はありがとうございました」

「あの時?」

「3人の男性から声をかけられていた時です。あの時、とても気分が悪かったんですけど、なかなか帰れなくて。だから、声をかけてくれてとてもありがたかったんです」


 ナンパを助けた時のことだと分かると、納得した。


「あぁ、あの時の。最近暑いですからね、熱中症は気をつけないと」

「熱中症……」


 旭は、気を遣ったつもりだったが彼女に不思議そうな顔をされ小首を傾げた。


「え? 熱中症だったんじゃないですか?」

「あっ……いえ。ついぼーっとしちゃって」

「まだ体調悪いんじゃ……。すみません、気を遣わせて。これ、見舞いの品です。翔兄ちゃんとこのたこ焼きで、すげぇ美味くて!……あ、でも食欲なんてない、ですよね」


 苦笑いを浮かべるしかなかった。

 見舞いには花やフルーツを持ってくる方が良いのは分かっていたが、洒落ている気がして恥ずかしかったのだ。


「いえ、頂きます。とっても良い匂いがすると思いました」


 旭の不器用な見舞い品に喜んでくれる彼女にホッと安堵すると、たこ焼きが入っているビニール袋を手渡した。