「……この子もノリ悪いし、もういいわ。行こうぜ」


 旭の悪評を聞き、男達が諦めると大きな体に隠れていた華奢な女の子だけが残された。

 サラサラで胸より長い黒髪。

 ぱっちりとした二重の大きく澄んだ瞳。

 通った鼻筋。

 肉のついていないシャープなフェイスライン。

 まさに、美少女という言葉がぴったりな女の子だった。

 これほど美人な子を見たことがない旭は、一瞬にして心を奪われた。


「あ、あの。大丈夫……ですか?」


 一言発すると、口から心臓が飛び出そうになった。

 声をかけると、彼女の大きな瞳が旭を捉えた。


「すみません……ありがとうございま……」


 か細い声で礼を伝えようとしたのだが、ふっと意識が遠のいた。

 体が前に倒れ、地面に激突しそうになったのを旭が抱えこんだ。


「っ、おい! しっかりしろ!」


 彼女に声をかけてみるが、目を閉じたままぴくりと動かなくなってしまった。


「誰か……誰か来てくれ!」


 どうしたら良いのか分からず、旭はただ声を上げるしかできなかった。

 朝日の声にすぐ反応して、店から出てきたのは翔だった。


「旭、どうしたんだよ……って、マジで何したんだ?」


 じとっとした目で旭を見る翔。

 もちろん、旭には心当たりなどない。


「ち、違う! この子が突然倒れたんだよ!」

「熱中症とかかも。ちょうど母さんが帰ってきたらから店から出れるし、車出すぞ」

「ありがと、翔兄ちゃん!」


 翔にそう伝えると、彼女の身体をひょいっと軽々しく持ち上げ彼らは病院へ向かった。