「いつものって……俺がそんだけ言っても口を開けばダメだってばっか言われるんだから」

「旭は家を出て何がしたいんだ?」


 翔の言葉に、旭はドキッとした。


(何がしたいか、か。)


「それは……東京に行ってからでも考えられるし」

「ここにいてもそれは同じだろ。親父さんは、話のわからない人じゃない。目的があれば、許してくれるさ」

「あのクソ親父が?」

「そう言うなって。それに、ここって住むのにそんな不便な場所じゃねぇだろ? 働き方に困ることもないし、買い物も困らない。あと、なによりこの辺に住む女性はーーって、あれ?」


 港町の良さを力説する翔。

 ここぞとばかりにこの商店街もアピールしようと手を広げて辺りを見渡すと、少し先の異変に気付き、顔をしかめた。


「翔兄ちゃん、どうしたの?」

「あれって……もしかしてナンパじゃね?」


 翔が指差す先には、3人の男が中から溢れ出る欲をおもむろに表情に出し1人の女に声をかけている様子。


「こんな田舎町でナンパなんてあんの?」

「あるある。まー、出会いなんてこの辺にしかないんだろ。やべ、そろそろ店にもどらねぇと」

「え? 放置すんの?」

「この町の女は、たしかに美人が多い。でもみんな気が強いから好みの男じゃなきゃコテンパンにやるだろ」


 楽観的に言うと、翔は店の中に戻った。