「そんなことないよ! 俺、スゲー楽しい!」

「ふふ、嬉しい。旭くんも楽しいって思ってくれて」


 目を細めて上品に笑う雅に、トクンと胸が高鳴った。

 そんな顔をする彼女に、なんとなく自信がわいてきた。


「あ、あの! 雅ちゃん!」

「うん? どうしたの?」

「お、俺と……その、港祭りへ行きませんか……!」


 耳まで赤くして、彼女を誘った。

 俯き、恥ずかしさから彼女の顔を見ることができない。

 ぎゅっとズボンを握り締め、シワが寄った。

 彼女なら、一緒に行ってくれるだろうという可能性だけでこれほど行動できることは、旭自身知らなかった。


「……ごめんね。お祭りには、一緒に行けないの」


 しかし、思っていた言葉とは違うものが返ってきて思わず顔を上げた。

 目に入ったのは、悲しそうな横顔だった。