〇 学校・教室(昼休み)
あの日呼び出されてから幾日か過ぎた
それでもやっぱり首筋を噛まれたときに触れた彼の唇の感覚が残っている気がする
ほのかに熱も帯びたままなのもきっと気のせいだろう
友だち A「最近結香よく首に手当ててるけどどしたん?」
友だち B 「もしかしてなんだけど結香、好きな人ができたでしょ」
結香「え?!っあ、でも好きとかじゃないと思う」
私を私よりもよく知っている2人から告げられた
無意識的にもう残ってない噛み跡の辺りに手を置いていたみたい
衝撃的すぎて忘れることができないだけで好きとかじゃ、きっとない
結香「2人は、すっ、好きな人とかいるの?」
友だち A「結香が恋愛話してくるなんて珍しいじゃん!やっぱり恋のお悩みじゃないのぉ~?」
ニヤリと笑って私をつついてきた友だち
だけど彼氏と付き合ってもう少しで2ヶ月記念日なんだと嬉しそうに報告してくれた
友だち A「結香と恋愛話できるなんて思わなかったよ~!はい次どーぞ」
友だち B「私の彼氏は......」
声のボリュームを落としたから3人で顔を寄せ合う
友だち B「吸血鬼なんだ」
友だち A「吸血鬼ぃ?!」
友だち B「ちょっ、声が大きいって。吸血鬼との恋愛はタブーなんだから!」
結香「え、タブー?!」
あ!っと口を押えてももう遅かった
2人の視線が私に集まる
結香「吸血鬼って人と恋愛禁止だったんだね」
友だち A 「結香知らなかったの?一条ファンクラブの人たちもよく言ってるじゃん、『叶わぬ恋をしてしまった』って」
友だち B 「例外はいるにはいるからね。だから世の中なんて気にせずいきたいなって思ってるところ」
何とかごまかせることができたみたい
昨日、一条くんに首筋かまれて、ドキッとしたなんて口が裂けても言えない
2人になら伝えても広まることはないんだろうけど、私の勇気がまだない
それにしても、契約を交わしたら高頻度で呼び出しが来るって思っていた
だけどそんなことはないみたい
なぜなら私は一回も呼び出されたことがないから
というか、血をわたすのってどうやるのかな
毎回嚙んでもらうんだたら、私いつか恥ずかしすぎて死んじゃいそう
周りの吸血鬼たちと比べて一段と優れた顔立ち───眉目秀麗なお顔が横にあるんだよ?
寿命縮まっちゃうって
結香「ね、柊くん。ちょっといいかな?」
柊「花畑さん。あー、誰かに呼ばれてた?」
結香「え?・・・うんそうだよ。『2人そろって来い』なんて言われて」
柊「そう。だったら早く行こう。」
柊くんに聞いた方が早いと思って声をかけると誰かに呼ばれたか聞かれてすごく焦った
でも教室にいる同級生たちが物珍しげに私たちを見ていて助け舟を出してくれたんだと気づく
誰にも呼ばれていないけれど彼の話に乗らせてもらって教室を出ると彼がすたすた歩き出したからそのあとをついていく
たどりついたのは生徒会室。壁隣りにはきっと一条くんがいる
〇 学校・生徒会室(昼休み)
柊「で、花畑さん。俺に何を聞きたいわけ?」
結香「えっとね、一条くんのことなんだけど......あれから全く呼ばれなくて何か知ってたりしないかなって」
会長室へ続く扉に視線を向ける
あの日、生徒会室にいたのは柊くんだけだったから何か知っているかもしれないと思って声をかけた
柊くんはちらりと扉に目をやると呆れたように息をついた
柊「由良はいつもと変わらず生徒会の仕事してるから何も問題ない。それでも気になるならノックしてはいるといいよ」
結香「え?!勝手にいいの?呼ばれてないのに」
柊「花畑さんは無関係じゃないしいいと思うよ。俺は際に教室戻ってるから。」
じゃあと生徒会室を出て行った柊くん『もし入るなら、気を付けたほうがいい』というまたよくわからない忠告を残して
あと5分もしたら本鈴が鳴り、授業が始まってしまう
一条くんの様子を確認したら戻ろう
そう決意して扉をノックした
ノックしてしまったんだ───
〇 学校・会長室(昼休み)
コンコンコンと扉をノックしてみたけれど中から反応がない
会長室にいつもいるとは限らないから今日はいないだけなのかもしれない
それでももし中で倒れてたりしたら?と思うといてもたってもいられなくて扉を押した
私が入室したことも分からないほど一条くんは書類に集中していた
このまま出たほうがいいのかじっとしていたほうがいいのかわからず迷っていると彼がふいに顔を上げ、視線が交差する
一条「花畑さん?」
結香「一条くん、ご飯食べてる?」
一条「は?」
結香「顔色が悪そうだから大丈夫か心配で。よかったら、今飲む?」
吸血鬼の食事事情なんて私にはさっぱりわからない
吸血って言うくらいだから血を飲むことが一番だと思って提案してみた
断られたら売店とかでほしいものを聞いて買ってこよう
一条「花畑さん、今自分でなんていったか本当に解ってんの?」
結香「うん?」
一条「はぁ、、、ま、くれんならありがたくもらうけど。」
書類を片付け、ソファーに腰かけた一条くん
一条「花畑さん、こっち来てもらえる?」
結香「うん」
こっちと言われた場所は一条くんの隣
この前は向かい側だったのに
でも血を飲むのに離れてたらできないもんね
一条くんの隣に座ると柔く握られた左手首
そのまま上に持ち上げると後ろへ押され、身体が傾いてソファーへ沈む
リボンを解かれ、ボタンも外される
一条「制御できないかも。止まらなかったら引っぱたいてもいいから」
そう言ってカプリと首筋に噛みついた
彼ののどを潤しているのは私の血
首筋にたてるてられている彼の牙
息がかかってくすぐったいしそわそわする
身体がジンと熱を持ち、頭がもうろうとする
何も考えられなくなって、なんだかおかしくなっちゃいそう
──キーンコーンカーンコーン
一条「花畑さん、ごめん。飲みすぎた」
本鈴が鳴り響き、我に返った一条くんが私の血を飲むのをやめた
まだ飲んでくれてもいいのに、と名残惜しさを感じながら立ち上がろうとするとふらついた
一条「花畑さん、ここで休んでいきなよ。立てないのは俺のせいだから」
結香「でも、授業が…」
一条「怜鳳が何とかするから心配はしなくていい」
一条くんは柊くんを怜鳳って呼ぶし、柊くんは一条くんのことを由良って呼ぶ
あの日の放課後も他の生徒会役員の人はいなくて柊くんだけがいたから
もしかして、もしかしなくても2人は仲良しなのかもしれない
聞いたところでわからない授業を聞かなかったらもっとわからなくなるのは目に見えている
だけど一条くんが大丈夫って言ってくれたから大丈夫な気がしてくるからやっぱりすごい
お言葉に甘えて休ませてもらって、後で友達にノートを写させてもらおう
〇 学校・会長室(授業中)
彼が用意してくれたココアを片手に書類作業に戻った一条くんをみる
少し顔色が良くなったみたい
よかったと思うとともに彼も授業を休んでしまうことになって申し訳なさを感じる
一条「俺さ、味覚がないんだよね」
書類作業をしながらぽつりと呟いた一条くん
これは返事が欲しい話じゃないやつだと判断した私は黙って彼が続けるのを待つ
もちろん話さなくても全然いい
一条「吸血鬼ってさ、契約した相手の血を飲んだり誰とも契約してない相手の血だったら飲んでもいいんだよ。それに血だけじゃなくても人と同じ食事だってしていいんだ。だけど、俺はそのどれにも味を感じたためしがない。人工血液ももちろん試してみたけどダメだった。粘土だったり泥を食べているような感覚で、って言っても粘土も泥も食べたことないし、食べても味なんてしないけど。そんな生活を17年続けてきた。」
ポツリポツリと話してくれる一条くん
ずっとどんな食べ物も味がしないってどんな感じなんだろう
幼い頃、風邪をひいて鼻もつまり、お母さんの美味しい料理の味も分からなくなって大泣きしたのを覚えている
一条「17年味のしない食事を続けてきた俺だけど突然口にしてみたいって思ったものがあった。それが花畑さん、君の血だった。こんな事いきなり言われて怖いかもしれない。だけど俺が気になるくらいの血の持ち主なんだ花畑さんは。きっと特殊な血液なんだと思う。だから今後気を付けたほうがいい、誰かに狙われて取り返しがつかなくなる前に」
つぅーっと冷や汗が出てきて、コクリと飲んだココアは冷めきっていた
今まで意識したことなんてなかった
自分が特別だなんて誰も思わないだろう
実際私も私自身が特別だなんて思ったことはない
むしろ平均以下
勉強だって運動だって容姿だって全てにおいて他人より秀でているなんて思ったことはない
だからこそ自分は危険とは程遠くて、むしろ無縁とさえ思っていた
私の血が私自身を危険に晒してしまうものだったなんて誰が想像できるだろう
気ッと誰も想像なんてできないと思う
結香「今まで誰かに狙われたことなんて記憶にないんだけど......」
一条「吸血鬼が好む特殊な血の持ち主は17歳に覚醒する。花畑さんの誕生日はもうそろそろでしょ?」
結香「えっと、5月17だよ」
一条「あと1週間か。多分学校の吸血鬼で勘の鋭いやつは俺以外にも気づいてるやつはいるはずだ。内なら対処できるんだけど外だと俺も守り切れるとは限らない。」
〇 学校・自室(休んだ授業のノートを書き写し中)
次の授業には出席したけれど
どうやら私は頭痛で保健室で休ませてもらっていたことないなっていたみたい
『もう体調大丈夫なの?柊にいきなり声かけられてびっくりしたよ。というか2人して呼ばれたって何だったの?いきなり立ち上がって柊のところ行ったからさ』
と心配もしてくれて、いつ返してくれてもいいからと言って授業ノートも貸してくれた
本当だったら今日中に休み時間と放課後を使って部活が終わるころまでには返せたらと思っていたんだけど
体調を崩していた私を遅くまで居残らせるにはいかないと帰って早く横になるように言われたためノートを1日借りることにした
あの後、本当に気を付けてくれと懇願された私
自分で自分を守る方法なんてあまり思いつかななくて
遅い帰宅はせずにすぐ下校すること、不要不急の外出は避けるよう約束をした
だけど楽観視しすぎていたみたい
危険はすぐそばまで迫っていたことに気づくことなんてできやしなかった
あの日呼び出されてから幾日か過ぎた
それでもやっぱり首筋を噛まれたときに触れた彼の唇の感覚が残っている気がする
ほのかに熱も帯びたままなのもきっと気のせいだろう
友だち A「最近結香よく首に手当ててるけどどしたん?」
友だち B 「もしかしてなんだけど結香、好きな人ができたでしょ」
結香「え?!っあ、でも好きとかじゃないと思う」
私を私よりもよく知っている2人から告げられた
無意識的にもう残ってない噛み跡の辺りに手を置いていたみたい
衝撃的すぎて忘れることができないだけで好きとかじゃ、きっとない
結香「2人は、すっ、好きな人とかいるの?」
友だち A「結香が恋愛話してくるなんて珍しいじゃん!やっぱり恋のお悩みじゃないのぉ~?」
ニヤリと笑って私をつついてきた友だち
だけど彼氏と付き合ってもう少しで2ヶ月記念日なんだと嬉しそうに報告してくれた
友だち A「結香と恋愛話できるなんて思わなかったよ~!はい次どーぞ」
友だち B「私の彼氏は......」
声のボリュームを落としたから3人で顔を寄せ合う
友だち B「吸血鬼なんだ」
友だち A「吸血鬼ぃ?!」
友だち B「ちょっ、声が大きいって。吸血鬼との恋愛はタブーなんだから!」
結香「え、タブー?!」
あ!っと口を押えてももう遅かった
2人の視線が私に集まる
結香「吸血鬼って人と恋愛禁止だったんだね」
友だち A 「結香知らなかったの?一条ファンクラブの人たちもよく言ってるじゃん、『叶わぬ恋をしてしまった』って」
友だち B 「例外はいるにはいるからね。だから世の中なんて気にせずいきたいなって思ってるところ」
何とかごまかせることができたみたい
昨日、一条くんに首筋かまれて、ドキッとしたなんて口が裂けても言えない
2人になら伝えても広まることはないんだろうけど、私の勇気がまだない
それにしても、契約を交わしたら高頻度で呼び出しが来るって思っていた
だけどそんなことはないみたい
なぜなら私は一回も呼び出されたことがないから
というか、血をわたすのってどうやるのかな
毎回嚙んでもらうんだたら、私いつか恥ずかしすぎて死んじゃいそう
周りの吸血鬼たちと比べて一段と優れた顔立ち───眉目秀麗なお顔が横にあるんだよ?
寿命縮まっちゃうって
結香「ね、柊くん。ちょっといいかな?」
柊「花畑さん。あー、誰かに呼ばれてた?」
結香「え?・・・うんそうだよ。『2人そろって来い』なんて言われて」
柊「そう。だったら早く行こう。」
柊くんに聞いた方が早いと思って声をかけると誰かに呼ばれたか聞かれてすごく焦った
でも教室にいる同級生たちが物珍しげに私たちを見ていて助け舟を出してくれたんだと気づく
誰にも呼ばれていないけれど彼の話に乗らせてもらって教室を出ると彼がすたすた歩き出したからそのあとをついていく
たどりついたのは生徒会室。壁隣りにはきっと一条くんがいる
〇 学校・生徒会室(昼休み)
柊「で、花畑さん。俺に何を聞きたいわけ?」
結香「えっとね、一条くんのことなんだけど......あれから全く呼ばれなくて何か知ってたりしないかなって」
会長室へ続く扉に視線を向ける
あの日、生徒会室にいたのは柊くんだけだったから何か知っているかもしれないと思って声をかけた
柊くんはちらりと扉に目をやると呆れたように息をついた
柊「由良はいつもと変わらず生徒会の仕事してるから何も問題ない。それでも気になるならノックしてはいるといいよ」
結香「え?!勝手にいいの?呼ばれてないのに」
柊「花畑さんは無関係じゃないしいいと思うよ。俺は際に教室戻ってるから。」
じゃあと生徒会室を出て行った柊くん『もし入るなら、気を付けたほうがいい』というまたよくわからない忠告を残して
あと5分もしたら本鈴が鳴り、授業が始まってしまう
一条くんの様子を確認したら戻ろう
そう決意して扉をノックした
ノックしてしまったんだ───
〇 学校・会長室(昼休み)
コンコンコンと扉をノックしてみたけれど中から反応がない
会長室にいつもいるとは限らないから今日はいないだけなのかもしれない
それでももし中で倒れてたりしたら?と思うといてもたってもいられなくて扉を押した
私が入室したことも分からないほど一条くんは書類に集中していた
このまま出たほうがいいのかじっとしていたほうがいいのかわからず迷っていると彼がふいに顔を上げ、視線が交差する
一条「花畑さん?」
結香「一条くん、ご飯食べてる?」
一条「は?」
結香「顔色が悪そうだから大丈夫か心配で。よかったら、今飲む?」
吸血鬼の食事事情なんて私にはさっぱりわからない
吸血って言うくらいだから血を飲むことが一番だと思って提案してみた
断られたら売店とかでほしいものを聞いて買ってこよう
一条「花畑さん、今自分でなんていったか本当に解ってんの?」
結香「うん?」
一条「はぁ、、、ま、くれんならありがたくもらうけど。」
書類を片付け、ソファーに腰かけた一条くん
一条「花畑さん、こっち来てもらえる?」
結香「うん」
こっちと言われた場所は一条くんの隣
この前は向かい側だったのに
でも血を飲むのに離れてたらできないもんね
一条くんの隣に座ると柔く握られた左手首
そのまま上に持ち上げると後ろへ押され、身体が傾いてソファーへ沈む
リボンを解かれ、ボタンも外される
一条「制御できないかも。止まらなかったら引っぱたいてもいいから」
そう言ってカプリと首筋に噛みついた
彼ののどを潤しているのは私の血
首筋にたてるてられている彼の牙
息がかかってくすぐったいしそわそわする
身体がジンと熱を持ち、頭がもうろうとする
何も考えられなくなって、なんだかおかしくなっちゃいそう
──キーンコーンカーンコーン
一条「花畑さん、ごめん。飲みすぎた」
本鈴が鳴り響き、我に返った一条くんが私の血を飲むのをやめた
まだ飲んでくれてもいいのに、と名残惜しさを感じながら立ち上がろうとするとふらついた
一条「花畑さん、ここで休んでいきなよ。立てないのは俺のせいだから」
結香「でも、授業が…」
一条「怜鳳が何とかするから心配はしなくていい」
一条くんは柊くんを怜鳳って呼ぶし、柊くんは一条くんのことを由良って呼ぶ
あの日の放課後も他の生徒会役員の人はいなくて柊くんだけがいたから
もしかして、もしかしなくても2人は仲良しなのかもしれない
聞いたところでわからない授業を聞かなかったらもっとわからなくなるのは目に見えている
だけど一条くんが大丈夫って言ってくれたから大丈夫な気がしてくるからやっぱりすごい
お言葉に甘えて休ませてもらって、後で友達にノートを写させてもらおう
〇 学校・会長室(授業中)
彼が用意してくれたココアを片手に書類作業に戻った一条くんをみる
少し顔色が良くなったみたい
よかったと思うとともに彼も授業を休んでしまうことになって申し訳なさを感じる
一条「俺さ、味覚がないんだよね」
書類作業をしながらぽつりと呟いた一条くん
これは返事が欲しい話じゃないやつだと判断した私は黙って彼が続けるのを待つ
もちろん話さなくても全然いい
一条「吸血鬼ってさ、契約した相手の血を飲んだり誰とも契約してない相手の血だったら飲んでもいいんだよ。それに血だけじゃなくても人と同じ食事だってしていいんだ。だけど、俺はそのどれにも味を感じたためしがない。人工血液ももちろん試してみたけどダメだった。粘土だったり泥を食べているような感覚で、って言っても粘土も泥も食べたことないし、食べても味なんてしないけど。そんな生活を17年続けてきた。」
ポツリポツリと話してくれる一条くん
ずっとどんな食べ物も味がしないってどんな感じなんだろう
幼い頃、風邪をひいて鼻もつまり、お母さんの美味しい料理の味も分からなくなって大泣きしたのを覚えている
一条「17年味のしない食事を続けてきた俺だけど突然口にしてみたいって思ったものがあった。それが花畑さん、君の血だった。こんな事いきなり言われて怖いかもしれない。だけど俺が気になるくらいの血の持ち主なんだ花畑さんは。きっと特殊な血液なんだと思う。だから今後気を付けたほうがいい、誰かに狙われて取り返しがつかなくなる前に」
つぅーっと冷や汗が出てきて、コクリと飲んだココアは冷めきっていた
今まで意識したことなんてなかった
自分が特別だなんて誰も思わないだろう
実際私も私自身が特別だなんて思ったことはない
むしろ平均以下
勉強だって運動だって容姿だって全てにおいて他人より秀でているなんて思ったことはない
だからこそ自分は危険とは程遠くて、むしろ無縁とさえ思っていた
私の血が私自身を危険に晒してしまうものだったなんて誰が想像できるだろう
気ッと誰も想像なんてできないと思う
結香「今まで誰かに狙われたことなんて記憶にないんだけど......」
一条「吸血鬼が好む特殊な血の持ち主は17歳に覚醒する。花畑さんの誕生日はもうそろそろでしょ?」
結香「えっと、5月17だよ」
一条「あと1週間か。多分学校の吸血鬼で勘の鋭いやつは俺以外にも気づいてるやつはいるはずだ。内なら対処できるんだけど外だと俺も守り切れるとは限らない。」
〇 学校・自室(休んだ授業のノートを書き写し中)
次の授業には出席したけれど
どうやら私は頭痛で保健室で休ませてもらっていたことないなっていたみたい
『もう体調大丈夫なの?柊にいきなり声かけられてびっくりしたよ。というか2人して呼ばれたって何だったの?いきなり立ち上がって柊のところ行ったからさ』
と心配もしてくれて、いつ返してくれてもいいからと言って授業ノートも貸してくれた
本当だったら今日中に休み時間と放課後を使って部活が終わるころまでには返せたらと思っていたんだけど
体調を崩していた私を遅くまで居残らせるにはいかないと帰って早く横になるように言われたためノートを1日借りることにした
あの後、本当に気を付けてくれと懇願された私
自分で自分を守る方法なんてあまり思いつかななくて
遅い帰宅はせずにすぐ下校すること、不要不急の外出は避けるよう約束をした
だけど楽観視しすぎていたみたい
危険はすぐそばまで迫っていたことに気づくことなんてできやしなかった