「あンのヤロー!! ぜってー許さねェー!!」
ワタシは今、猛烈に激怒している。激怒しながら、寮の廊下を全力で走っていた。
にっくきアイツの涼しい顔を、アタシの炎で溶かし尽くして、べっちょべちょの液体にしてやりたい! いや、水分すらも飛ばしてやらぁ!
だから、アタシはアイツの部屋にカチコミに行ってやろうとしていたことろだ。
あー、むっかつく!! むかつくアイツの氷のように涼しいツラが、頭ん中にちらちら浮かぶ。それだけで、腹ん中の内臓がぐつぐつ煮えてくる。
「ぶっ潰してやる!! プラント・グレイシャ!!」
アイツはマジ許さねェ!! スカした顔で、いかにも「ぼくは優等生です」って言ってるようなヤツのくせに!
中身は真っ黒なクソヤローだ! ワタシをハメやがった!!
ついさっき、アイツがワタシの部屋に来た。
『ケーキ作ってみたんだが、食うか?』
石像みてェなツラをした、目だけは死んでいない堅物そうな男が、カップケーキを乗せた皿を持って立っていた。
なんて笑える絵面だろ。
『意外だな。お前に料理の趣味があったなんて』
『せっかくの休みだから、何か新しいことに挑戦したいと思ってな。甘いのは嫌いじゃないからケーキ作ってみたんだ。たくさん作ったから、お前にもわけてやるよ』
そう言ってヤツは、皿ごとワタシに寄越して、帰っていった。
『へぇ〜、アイツにそんな乙女な趣味があったんだな〜』
アイツの趣味といえば、人をからかったり追い詰めたりして楽しむドSくらいだ。あとはぷらぷら気ままに生きてるんだろ。
そんなことを考えながら、ヤツからもらったカップケーキを丸々口に入れた。
―― 辛ーっ!!!
中には、大量のタバスコが加えられていた。
おかげで口の中は、燃え上がる炎のように熱く、ヒリヒリした。
身体全体が熱くなって、おでこからは汗がにじんだ。
急いで水を飲んで、なんとかなったけど……。
あのヤローだけは、ぜってー許さねェ!!
ヤツの部屋の前に到着すると、呼び出しベルを鳴らしまくって、アイツを呼び出す。
「出てこーーい!! プラント・グレイシャーー!!」
絶叫してヤツを引っ張りだす! だがアイツは、出てこない。
「出てこいっつってんだろォが!! 腐れアイス野郎!! 来なけりゃこのドア焼き切っぞォ!!」
突然横から、大量の冷たい液体が飛んできた。顔もその下もべっちょべちょだ。
「やめろ。頭を冷やせ」
そこにはにっくきプラントがいた。相変わらずのムカつくツラだ。
「誰がワタシを怒らせたと思ってる……」
「さぁな。検討もつかねぇ。少なくとも俺は、お前のためにサプライズをしてやっただけだ。恨まれる筋はない」
淡々と綺麗事ばっかり抜かしやがって。本当は腹ん中、真っ暗なくせに。
「クソヤローー!! ぶっ潰してやらぁ!!」
頭に来たワタシは、ヤツに向かって、自慢の炎魔法を発射した。
【ファイヤーバーン!!】
ヤツは再び、水を出す魔法を発射した。
双方から発射された炎の魔法と水の魔法がぶつかり、一瞬で炎はかき消されてしまった。
ワタシはまたずぶ濡れになった。
「落ち着け、フレイカ。お前の欠点はそういうところだ。ちょっとからかってやったくらいでブチ切れてたら、この先、生きていけねぇよ」
出た、コイツの腐れ説教。何も言わなさそうな顔してるクセに、口うるさいヤツだ。それに「からかった」って……。
「お前! やっぱりワタシを騙しやがったな! この腹黒ドSヤロ……」
急にヤツが迫ってきて、ヤツはワタシのあごをくいっと持ち上げて、また説教を言った。
「だから落ち着けって、お嬢ちゃん。もう少し頭を回せ。この調子で騙されまくってたら、そう遠くないうちに命を落とすぜ。
次は、タバスコケーキじゃ済まねェかもしれねェ。俺より弱ェんだから、用心しとくことだな」
ヤツは言い終えると、自分の部屋の中に入った。
――ちぇっ、偉そうな……。
「あ……あのぉ」
横から声が聞こえた。見ると、いかにも気弱そうな女の子だった。
「ん? ワタシ?」
「は……はいぃ。……フレイカ・パッションさんですよね?」
「そうだよ! なにか?」
「……あ、あのっ、助けてください! わたし今……脅されてるんですっ!」
衝撃のカミングアウトに、ワタシは目を見開いて驚いた。
「脅されてるって、誰に!?」
尋ねるワタシに、女の子は体をブルブル震わせていた。
「とっ、トパウス・ドラゴン様です……。ドラゴン使いの名門・ドラゴン家の長男」
「――だれそれ。……ドラゴン?」
「……あり得ない! トパウス・ドラゴン様の名を知らないなんて!」
「うん、知らない。ワタシ、他人のこととかどーでもいいんだ」
女の子は、なぜか慌てていた。
「と……とにかく! わたしはその人に脅されて……従わなきゃ、殺されちゃうの……」
「なんてクソヤローだ! ……でー君、名前は?」
「ガーネコといいます」
「わかったよ、ガーネコ。ワタシが守ってあげるっ!」
ワタシがそう言うと、ガーネコは安心した表情になった。
「ありがとうございますぅ。フレイカさんは、頼もしくて素敵です!」
くすぐったいなぁ〜。ガーネコは、褒め上手みたいだ。
「で、何すんの?」
「えっとぉ……一緒に来てもらいたいです」
「それだけ?」
ワタシはとりあえず、ガーネコの後ろについていった。
ドア越しに聞いていたアイツが、「言ったそばから……」とため息をついたのも知らず。
♡ ♡ ♡
ガーネコに連れられてやって来たのは、人気のいない森だった。
「ここ? こんな森にトパクズのヤローがいるっていうの?」
「トパウスです」
「なんでわざわざ、森なんだよ……」
「そりゃあ、人に見られたら困るからでしょう」
……なんだか、ガーネコの様子が変わったような……。
「……例えば、こんなこと♡」
【ドラゴングレア】
ガーネコが振り返り、鋭い眼光を見て間もなく、わたしはカチンと固まった。体がビビっているのか、ガタガタ震えて全然動かせない。
【テイルアタック!】
別のヤツの声!!
「グァァァァァァァァ!!!!!」
けたたましい咆哮が聞こえたかと思うと、背中にデッカイ衝撃が加えられ、あっという間に吹っ飛ばされて、木か何かに衝突した。
……いきなりのことで、何がなんだか分かんなかった。
……なに、この状況。どうなってるの?
……わたし……ヤバい?
わたしの目の前にはガーネコと、知らない男と、男の手下らしい2mは超えているデッカいドラゴンがいた。
「俺の名はトパウス・ドラゴン。あの男への因縁を果たしにきた」
男はカッコつけた様子で自己紹介をした。
「お兄さまぁ〜。わたくし、ちゃんと連れてきましたよぉ? にっくきプラント・グレイシャの大事な人っ」
「でかした、ガーネコ。我が妹よ」
ガーネコはトパウスに身体を寄せて、甘えるような声で自分の功績をアピったのに対し、トパウスはガーネコの頭をよしよしとなでた。
ガーネコは、両手をほっぺに添えて喜んだ。
「いやぁん、お兄さまぁっ♡」
……こいつら、人前でイチャつきやがって。わたしはいったいどんな顔で見てればいいんだ。
いやそんなことよりも、聞き捨てならねぇ発言が聞こえた。
「おい待て」
わたしはイチャつくこいつらに、ムカムカを募らせて言った。
「ん、なんだ?」
「誰が誰の大事な人っつったよ?」
わたしの問いに、ガーネコが答えた。
「だから、フレイカあなたは、プラントの大事な彼女じゃないの?」
「誰が彼女じゃ、コノヤローー!!!!」
怒ったわたしは、ガーネコたちに飛びかかった。
【ファイヤーバーン!!】
【テイルアタック!】
あっという間に吹っ飛ばされた。
トパウスがドラゴンに指示を出し、ドラゴンは自前の尻尾でわたしを殴り飛ばした。
「なんだ。プラントと対等に接しているから、それなりの力があったのかと思えば、威勢が良いだけのただの雑魚か」
トパウスがムカつく言葉を言い放った。
「ねぇ、フレイカぁ。あなたはどうしてこの学校にいるのぉ? 弱いくせにぃ」
ガーネコも、容赦ないムカつく一言を――。
「……ガーネコ……オマエ……騙したのか……」
「ええそうよ。お兄さまにお使いを頼まれたの。随分と簡単だったわ」
「プラントに目に物言わせやるための格好の餌として準備しようと思ったが、効果は期待できそうにないな」
……クッソー! 散々わたしを貶しやがって。
でも事実、わたしはあの二人には勝てそうにない。
わたしは顔を下に向けた。
「しかし、可笑しかったわ。なんの疑いもなく信じていたのだもの」
「なんと間抜けな女だ。そう安々と人を信じていては、命や金がいくらあっても足りないぞ」
あのムカつく氷ヤローをギャフンと言わせてやりたいけれど、この二人に勝てないようじゃ、無理そうだな……。
「何、意気消沈してんだ炎バカ」
聞き慣れ腐った声。顔を上げると、氷ヤローが眼の前に立っていた。
足を開くことなくスマートにカッコ付けている、プラントのヤローの背中があった。
「お前……」
「その炎さえ消しちまったら、お前には何が残るっていうんだ?」
ヤツの言葉を聴いて、わたしの心はドッと動いたような気がした。
そうだ……わたしの取り柄は、赤く燃え上がる炎のような情熱だ!!
「うっせー!! エッラそうに語ってんじゃねーよ!! あんな雑魚、わたしの炎で十分じゃー!!」
「いや、炎魔法じゃあいつらは倒せねぇ。単純に相性が悪いからな」
「相性!?」
「お前、知らねぇの? あの兄妹、ドラゴン魔法の名門の出だぜ。有名な話だ」
「知らねぇよ、んなもん! わたしは目の前で起こってることにしか興味ないの!」
「もう少し視野を広げるべきだぜ、お嬢さん」
わたしとヤローとのやり取りを聴いた、ドラゴン魔法の名門の二人は激怒した。
ガーネコもドラゴンを召喚し、二体のドラゴンと対峙することになった。
「二体ともまとめて俺がやる。お前は下がってろ」
「うっせー!! 相性が悪かろうが、ガンガンヤれば削れんだろ!! 鱗丸焦げにしてやんよ!!」
わたしとプラントは、口々に言い合いながら、ドラゴン兄妹に攻撃を仕掛けていった。
ワタシは今、猛烈に激怒している。激怒しながら、寮の廊下を全力で走っていた。
にっくきアイツの涼しい顔を、アタシの炎で溶かし尽くして、べっちょべちょの液体にしてやりたい! いや、水分すらも飛ばしてやらぁ!
だから、アタシはアイツの部屋にカチコミに行ってやろうとしていたことろだ。
あー、むっかつく!! むかつくアイツの氷のように涼しいツラが、頭ん中にちらちら浮かぶ。それだけで、腹ん中の内臓がぐつぐつ煮えてくる。
「ぶっ潰してやる!! プラント・グレイシャ!!」
アイツはマジ許さねェ!! スカした顔で、いかにも「ぼくは優等生です」って言ってるようなヤツのくせに!
中身は真っ黒なクソヤローだ! ワタシをハメやがった!!
ついさっき、アイツがワタシの部屋に来た。
『ケーキ作ってみたんだが、食うか?』
石像みてェなツラをした、目だけは死んでいない堅物そうな男が、カップケーキを乗せた皿を持って立っていた。
なんて笑える絵面だろ。
『意外だな。お前に料理の趣味があったなんて』
『せっかくの休みだから、何か新しいことに挑戦したいと思ってな。甘いのは嫌いじゃないからケーキ作ってみたんだ。たくさん作ったから、お前にもわけてやるよ』
そう言ってヤツは、皿ごとワタシに寄越して、帰っていった。
『へぇ〜、アイツにそんな乙女な趣味があったんだな〜』
アイツの趣味といえば、人をからかったり追い詰めたりして楽しむドSくらいだ。あとはぷらぷら気ままに生きてるんだろ。
そんなことを考えながら、ヤツからもらったカップケーキを丸々口に入れた。
―― 辛ーっ!!!
中には、大量のタバスコが加えられていた。
おかげで口の中は、燃え上がる炎のように熱く、ヒリヒリした。
身体全体が熱くなって、おでこからは汗がにじんだ。
急いで水を飲んで、なんとかなったけど……。
あのヤローだけは、ぜってー許さねェ!!
ヤツの部屋の前に到着すると、呼び出しベルを鳴らしまくって、アイツを呼び出す。
「出てこーーい!! プラント・グレイシャーー!!」
絶叫してヤツを引っ張りだす! だがアイツは、出てこない。
「出てこいっつってんだろォが!! 腐れアイス野郎!! 来なけりゃこのドア焼き切っぞォ!!」
突然横から、大量の冷たい液体が飛んできた。顔もその下もべっちょべちょだ。
「やめろ。頭を冷やせ」
そこにはにっくきプラントがいた。相変わらずのムカつくツラだ。
「誰がワタシを怒らせたと思ってる……」
「さぁな。検討もつかねぇ。少なくとも俺は、お前のためにサプライズをしてやっただけだ。恨まれる筋はない」
淡々と綺麗事ばっかり抜かしやがって。本当は腹ん中、真っ暗なくせに。
「クソヤローー!! ぶっ潰してやらぁ!!」
頭に来たワタシは、ヤツに向かって、自慢の炎魔法を発射した。
【ファイヤーバーン!!】
ヤツは再び、水を出す魔法を発射した。
双方から発射された炎の魔法と水の魔法がぶつかり、一瞬で炎はかき消されてしまった。
ワタシはまたずぶ濡れになった。
「落ち着け、フレイカ。お前の欠点はそういうところだ。ちょっとからかってやったくらいでブチ切れてたら、この先、生きていけねぇよ」
出た、コイツの腐れ説教。何も言わなさそうな顔してるクセに、口うるさいヤツだ。それに「からかった」って……。
「お前! やっぱりワタシを騙しやがったな! この腹黒ドSヤロ……」
急にヤツが迫ってきて、ヤツはワタシのあごをくいっと持ち上げて、また説教を言った。
「だから落ち着けって、お嬢ちゃん。もう少し頭を回せ。この調子で騙されまくってたら、そう遠くないうちに命を落とすぜ。
次は、タバスコケーキじゃ済まねェかもしれねェ。俺より弱ェんだから、用心しとくことだな」
ヤツは言い終えると、自分の部屋の中に入った。
――ちぇっ、偉そうな……。
「あ……あのぉ」
横から声が聞こえた。見ると、いかにも気弱そうな女の子だった。
「ん? ワタシ?」
「は……はいぃ。……フレイカ・パッションさんですよね?」
「そうだよ! なにか?」
「……あ、あのっ、助けてください! わたし今……脅されてるんですっ!」
衝撃のカミングアウトに、ワタシは目を見開いて驚いた。
「脅されてるって、誰に!?」
尋ねるワタシに、女の子は体をブルブル震わせていた。
「とっ、トパウス・ドラゴン様です……。ドラゴン使いの名門・ドラゴン家の長男」
「――だれそれ。……ドラゴン?」
「……あり得ない! トパウス・ドラゴン様の名を知らないなんて!」
「うん、知らない。ワタシ、他人のこととかどーでもいいんだ」
女の子は、なぜか慌てていた。
「と……とにかく! わたしはその人に脅されて……従わなきゃ、殺されちゃうの……」
「なんてクソヤローだ! ……でー君、名前は?」
「ガーネコといいます」
「わかったよ、ガーネコ。ワタシが守ってあげるっ!」
ワタシがそう言うと、ガーネコは安心した表情になった。
「ありがとうございますぅ。フレイカさんは、頼もしくて素敵です!」
くすぐったいなぁ〜。ガーネコは、褒め上手みたいだ。
「で、何すんの?」
「えっとぉ……一緒に来てもらいたいです」
「それだけ?」
ワタシはとりあえず、ガーネコの後ろについていった。
ドア越しに聞いていたアイツが、「言ったそばから……」とため息をついたのも知らず。
♡ ♡ ♡
ガーネコに連れられてやって来たのは、人気のいない森だった。
「ここ? こんな森にトパクズのヤローがいるっていうの?」
「トパウスです」
「なんでわざわざ、森なんだよ……」
「そりゃあ、人に見られたら困るからでしょう」
……なんだか、ガーネコの様子が変わったような……。
「……例えば、こんなこと♡」
【ドラゴングレア】
ガーネコが振り返り、鋭い眼光を見て間もなく、わたしはカチンと固まった。体がビビっているのか、ガタガタ震えて全然動かせない。
【テイルアタック!】
別のヤツの声!!
「グァァァァァァァァ!!!!!」
けたたましい咆哮が聞こえたかと思うと、背中にデッカイ衝撃が加えられ、あっという間に吹っ飛ばされて、木か何かに衝突した。
……いきなりのことで、何がなんだか分かんなかった。
……なに、この状況。どうなってるの?
……わたし……ヤバい?
わたしの目の前にはガーネコと、知らない男と、男の手下らしい2mは超えているデッカいドラゴンがいた。
「俺の名はトパウス・ドラゴン。あの男への因縁を果たしにきた」
男はカッコつけた様子で自己紹介をした。
「お兄さまぁ〜。わたくし、ちゃんと連れてきましたよぉ? にっくきプラント・グレイシャの大事な人っ」
「でかした、ガーネコ。我が妹よ」
ガーネコはトパウスに身体を寄せて、甘えるような声で自分の功績をアピったのに対し、トパウスはガーネコの頭をよしよしとなでた。
ガーネコは、両手をほっぺに添えて喜んだ。
「いやぁん、お兄さまぁっ♡」
……こいつら、人前でイチャつきやがって。わたしはいったいどんな顔で見てればいいんだ。
いやそんなことよりも、聞き捨てならねぇ発言が聞こえた。
「おい待て」
わたしはイチャつくこいつらに、ムカムカを募らせて言った。
「ん、なんだ?」
「誰が誰の大事な人っつったよ?」
わたしの問いに、ガーネコが答えた。
「だから、フレイカあなたは、プラントの大事な彼女じゃないの?」
「誰が彼女じゃ、コノヤローー!!!!」
怒ったわたしは、ガーネコたちに飛びかかった。
【ファイヤーバーン!!】
【テイルアタック!】
あっという間に吹っ飛ばされた。
トパウスがドラゴンに指示を出し、ドラゴンは自前の尻尾でわたしを殴り飛ばした。
「なんだ。プラントと対等に接しているから、それなりの力があったのかと思えば、威勢が良いだけのただの雑魚か」
トパウスがムカつく言葉を言い放った。
「ねぇ、フレイカぁ。あなたはどうしてこの学校にいるのぉ? 弱いくせにぃ」
ガーネコも、容赦ないムカつく一言を――。
「……ガーネコ……オマエ……騙したのか……」
「ええそうよ。お兄さまにお使いを頼まれたの。随分と簡単だったわ」
「プラントに目に物言わせやるための格好の餌として準備しようと思ったが、効果は期待できそうにないな」
……クッソー! 散々わたしを貶しやがって。
でも事実、わたしはあの二人には勝てそうにない。
わたしは顔を下に向けた。
「しかし、可笑しかったわ。なんの疑いもなく信じていたのだもの」
「なんと間抜けな女だ。そう安々と人を信じていては、命や金がいくらあっても足りないぞ」
あのムカつく氷ヤローをギャフンと言わせてやりたいけれど、この二人に勝てないようじゃ、無理そうだな……。
「何、意気消沈してんだ炎バカ」
聞き慣れ腐った声。顔を上げると、氷ヤローが眼の前に立っていた。
足を開くことなくスマートにカッコ付けている、プラントのヤローの背中があった。
「お前……」
「その炎さえ消しちまったら、お前には何が残るっていうんだ?」
ヤツの言葉を聴いて、わたしの心はドッと動いたような気がした。
そうだ……わたしの取り柄は、赤く燃え上がる炎のような情熱だ!!
「うっせー!! エッラそうに語ってんじゃねーよ!! あんな雑魚、わたしの炎で十分じゃー!!」
「いや、炎魔法じゃあいつらは倒せねぇ。単純に相性が悪いからな」
「相性!?」
「お前、知らねぇの? あの兄妹、ドラゴン魔法の名門の出だぜ。有名な話だ」
「知らねぇよ、んなもん! わたしは目の前で起こってることにしか興味ないの!」
「もう少し視野を広げるべきだぜ、お嬢さん」
わたしとヤローとのやり取りを聴いた、ドラゴン魔法の名門の二人は激怒した。
ガーネコもドラゴンを召喚し、二体のドラゴンと対峙することになった。
「二体ともまとめて俺がやる。お前は下がってろ」
「うっせー!! 相性が悪かろうが、ガンガンヤれば削れんだろ!! 鱗丸焦げにしてやんよ!!」
わたしとプラントは、口々に言い合いながら、ドラゴン兄妹に攻撃を仕掛けていった。