「お疲れ様でございます、フロリアン様!」

コンサラットに案内されたお屋敷のホールで、二十人ほどの使用人たちから挨拶されました。

「あの、この方たちは?」
「お嬢様、難民地区から選りすぐった使用人や料理人たちでございます」
「私一人のために?贅沢ですわ!」
「いえいえ、ぜひ我々にお世話をさせてください。実はお嬢様が亡命されると聞いて密かに募集をかけたところ、恩返しがしたいと志願者が殺到しました……これでもかなり人選したのでございます」
「そう……なのですか」

私はディーナとユリカが側にいてくれれば十分なので、お断りしようと思いましたが、全員が私に対して尊敬の念を抱いているような熱い視線を感じ、やむを得ず一旦納得したふりをしました。しばらく様子を見て改めて判断しようと思います。

続いて、豪華なプライベートダイニングルーム、いや、この広さはもはやグレート・ホール(大広間)ですが、ワインをいただきながらフルコースのお料理を堪能しました。いや、させられたと言うべきでしょうか。

「どう?神になった気分は?」
「モニカ様、あ、モニカ。……あまりにもギャップが激しくて、落ち着きませんわ」
「すぐに慣れるわよ。で、私は神様付きの役人だから、このお屋敷で小さな執務室とプライベートルームを頂きたいんだけど、よろしくて?」
「コンサラットにお願いしたら?だって私、来たばかりで間取りも何も分からないですし」
「じゃ、そうしようっと!うふふ」

モニカはワインの飲みすぎでかなり酔っているご様子です。今晩はお泊まりになるつもりかしら……

「はあー、私はやっぱり貴女に敵わないわねえ」
「え?何の話ですか?」
「私は貴女に嫉妬してるの!貴族院の時もそう、いくら勉強しても首席になれなかったし!」
「いえいえ、私の方こそ、華やかな貴女に嫉妬してましたわ。いつもたくさんの学友に囲まれて羨ましかったです!」
「でもね、憧れの殿下はフロリアンに夢中のご様子。学力も女性としても、この私より優れているのよ」
「殿下は単に私からカアラプシャン国の情報が欲しいだけです。私に夢中だなんてあり得ません!」
「そうは見えなかったけど?」
「からかわないでください!」

全く、モニカったら悪いお人だこと!

珍しくムキになりました。私もワインで少々酔ったのかもしれません。でも、そんなモニカとはこの先、一生の親友になるなんて、この時は想像もしていませんでした──

***

あれから三日が経ち、ライクス王国のベリューム家では至れり尽くせりのお世話をしていただいています。また、カアラプシャン街をお散歩すると、あっという間に人だかりができ、兵士たちもガードに忙しそうです。握手を求める人には兵士を制してできるだけ応えていますが、正直キリがありません。「私はスターですか!?」と、思ってしまいます。

この環境変化に慣れるには、まだ時間がかかりそうです。そしてもう一つの環境変化と言えば、今日は憧れのゲーニウス殿下にお逢いする日です。