「お、おいっ! ミルク! そんな身体で何処に行くんだよ!」

 廊下を走る私の後を追いかけながらジャックが声を掛けてくる。

「ニャニャンニャンニャンニャン!! ニャーンニャン!」
(私のことはいいから!! 早く来てよ!)

 私は振り返りながらニャンニャンとジャックに訴えた。

「それより身体の手当をしたほうがいいじゃないか! お前に何かあったらアビーに責められちゃうからさぁ!」

 何言ってるのよ! 私の身体なんてどうだっていいのよ!ク ロードの方が余程大事なんだから!
 どんどん廊下を走り……ついにクロードが倒れている部屋に辿り着いた。

「あれ? 何で扉が開いているんだ?こ こは確かクロード様の……?」

 私の後ろを走るジャックも部屋のことに気づいたようだった。

「ニャーン!!」
(クロード!!)

 私が部屋に飛び込むと、ジャックもすぐ後に続き……悲鳴を上げた。

「うわっ!! な、何だこの部屋は! 物が散乱しているし、棚が倒れている!!」

「ニャーンニャーン」
(クロード、クロード)

 倒れた棚の下敷きになっているクロードは完全に気を失っていた。
 ペロペロとクロードの顔を舐めても、全く反応してくれない。

 障害物を避けながら、ようやく私達の元に辿り着いたジックは棚の下敷きになっているクロードを発見して顔色を変えた。

「クロード様!! 待って下さい!! すぐに助けて差し上げます!」

 ジャックは倒れている棚に両手を添えると、渾身の力を込めて棚を上げた。

「う……でや!!」

 妙な掛け声とともに棚は元の位置に戻された。

「クロード様!! しっかりして下さい!!」

 床に倒れているクロードにジャックは声をかけた。すると、小さな呻き声を上げながら薄目を開けた。

「う……」

「良かった! クロード様っ! すぐに人を呼んで参りますから!」

 そしてジャックは慌ただしく部屋を飛び出して行った。

「ニャ〜ン……」
(クロード……)

 すると、クロードは弱々し笑みを浮かべて私を見る。

「あ、ありがとう……ミルク……き、君が……ジャックを呼んでくれたんだね……? そ、そんな傷だらけの身体で……」

「ニャンニャンニャンニャーン……」
(私の身体なんていいのよ……)

 でもクロードの言う通り、私の身体は酷い有様だった。あちこち擦り傷ができて、真っ白な毛には血が所々に滲んでいる。

「本当に……君は……命の恩人……だ……」

 そしてクロードは再び意識を失ってしまった。

「クロードッ!! クロードッ!!」

 その時……。

「うっ!!」

 再び、身体が焼け付くような感覚を覚えた。

「こ、これは……またしてもメタモルフォーゼ!?」

 またしてもこんなタイミングで変身するなんて……で、でも今度こそ、きっと人間に戻れるはず……!


 そして私の身体は変身した――