でも人の言葉が喋れるようになったのなら、これはチャンス! 自分は本当は人間で、呪いにかけられて蛙にされたことを伝えなければ! ついでに沢山感謝してもらえれば、いずれ元の姿に戻れることも……!

「あ、あの……ケロケロッ!!」

 言葉を話そうとした途端、またしても蛙の鳴き声に変わってしまった。

「ケローッ!!」

(そんなーっ!!)

「ケロケロ!? ケロケロケロケロ! ケロケローッ!!」

(嘘でしょう!? 何でなのよ! どうしてよーっ!!)

 再びケロケロとしか鳴けなくなった私を見て首を傾げるのはクロードと庭師さん。

「あれ? おかしいな……ついさっき人の言葉を話していたと思ったけど……」

「はい、私も人の言葉を聞いた気がします」

クロードと庭師さんが相談を始めた。

「でも今はケロケロとしか鳴かないなぁ」

「ええ、妙ですよね。空耳かも知れませんね」

『空耳のはず無いでしょう!? ほんとに人の言葉を話したでしょう!?」

「うん、やっぱりベンの言う通り空耳だったんだ。大体人の言葉を話せる蛙がこの世にいるはずないしね」

 庭師さんの話に納得してしまうクロード。
 

『嘘でしょうっ! 何で空耳でまとめちゃうのよーっ!!』

 半ば怒りを込めてケロケロと鳴くと、再び余計なことを言う庭師さん。

「クロード様。蛙さんが餌を欲しがっているようですよ?」

「あ、そうだ。ペンダントを見つけてくれたら、とびきりの餌をあげるよと約束していたっけね。よし、それじゃ白蛙さん。ここで待っていてくれるかな? 餌を持ってきてあげるよ」

『確かに餌は欲しいけど、私はそんな事言ってないってば!!」

「クロード様、私も行きましょう」

「うん、そうだね。2人で行こう。それじゃまたね。白蛙さん」


「ケロッ!! ケロケロケロッ!!」

(ちょっと!! それより感謝してよ!!)

 しかし私の願いも虚しく、クロードと庭師さんは私に背を向けると談笑しながら去っていく。

『こらーっ!! 勝手に行かないでよーっ!!』

 思わずケロケロと叫んだ時――


「やぁ、サファイア。元気そうだね?」

 突然真上から声が降ってきて、気づけば目の前の景色が一瞬で変わった。



「え?」

 気づけば私は高い木の枝の上に乗っており、目の前にはあの怪しげな魔法使いが同じく枝の上に乗っていた。
 そのあまりの高さに身の毛がよだつ。

「きゃーっ!! 高いっ! 怖いっ! って……あれ!?」

 何と驚くべきことに、今私の口からは人の言葉が発せられているではないか。

「良かったねサファイア。ようやく人の言葉が話せる蛙になれたんだね?」

 黒マント姿の胡散臭い魔法使いは私を見て、口元に笑みを浮かべた――