何十年も前に貴族が別荘として建てた洋館。

今では不便な場所だと所有が放棄され、手つかずの状態となっていた。

そこをリアムが見つけ、居住地としている。

旧式の暖炉や水回りではあったが、慣れればまったく問題なく使用が出来る。

王城暮らしのルーナには不慣れなことも多かったが、順応性は高く知識を駆使して生活スタイルを確立した。

とはいっても、リアムはなんだかんだで世話焼きな面があり、なんでも試そうと突っ込んでいくルーナの暴走を止める。

狼の嫁となると胸を張りやってきたはいいものの、根っこはお姫様であり料理を作ることも出来ない。

これでは危なっかしいと、リアムが何から何まで尽くすようになっていた。

「旦那様。これは食べられますか?」

ルーナの問いかけにリアムが頷く。

ぱぁっと表情を明るくし、ルーナは喜びにほんのり頬を染める。

寒冷期が訪れる前に食料は確保する必要がある。

野菜やきのこ類を加工し、保存食にしていく。

狼なのに、リアムは調理加工と簡単にこなしていった。

負けじとルーナはリアムに教わりながらではあるが、肉の処理など冬支度として積極的に取り組んだ。

「今日は旦那様が用意してくださりましたうさぎのお肉を使いましょう!」

リアムはよく狩りのため、森を駆けることがある。

長生きしているだけあり、狼としても人間としても、両方の生活能力を兼ね備えていた。

「まさかお前……」

「はいっ! 今晩は私が作ります!」

両手をぐっと握りしめ、気合を入れる。

「アイスノ王国の名物、ラビットシチューを召し上がれ」