獣に嫁ぐ以上、人間らしさなんてどうでもよいと思っていたのに……。
神にも近いフェンリルからすると、美しいの基準はどうなのだろうと知りたい気持ちが強くなった。
「王女ならば誰でもよかったというのに」
ぼそりと口にされた言葉は聞き取れない。
「旦那様?」
「ルーナといったな」
「……っ! はい! あの……旦那様のお名前を教えてくださいな!」
「……リアム」
それはとてもくすぐったい響きだった。
「足りぬものがあればすぐに言え」
そう言ってルーナの肩を押し、屋敷の中へと歩いていく。
途中、炎をまとって姿を狼に戻してしまう。
揺れる尻尾とチラリと見える肉球にルーナの目は釘付けだ。
人型としての尻尾も良いが、狼の短い毛にも触れてみたいもの。
きゅうぅと締め付けられる胸の高鳴りにルーナは満面の笑みを浮かべ、追いかけていった。