「人がどのように語っているかは知らぬが……」

熱風が吹き荒れる。

青い炎が渦を巻き、狼の姿を隠してしまう。

だがそれも一瞬のことで、炎が消えると中から銀色の長髪をした人間の男性が現れる。

銀色に艶めく切れ長の目元に、雪のように白い肌。

トパーズを埋め込んだような左目と、ルビーを連想させる右目。

銀色の尻尾が生えており、身体を隠すように巻き付けている。

頭部には三角の耳があり、ぴょこぴょこと折っては伸ばすを繰り返していた。


「もとは神格に価する狼だ。人の姿をとるくらい造作もない」

「……なるほど。だから人間との結婚にも問題はないと」

「は?」

(あぁ、あれこれ想像する必要もなかったのね)

彼との間に障壁はない。

あったとしてもそんなものは破壊して見せようと思ってはいたが。

(王女でもなく、姉でもない。肩書なしに嫁ぐことが出来るなら)

すべては杞憂なこと。

ルーナはカッと目を開き、口内に溢れた唾液を飲み込んで両手を前に出す。

その勢いで彼の身体を隠す尻尾を掴み、鼻息を荒くしていた。

「子どもは! 何人産みましょう!?」