「ルーナに出会い、そんな幼稚さもどこかへいった。……魔獣だからと独りで生きていた。人の営みが、家族という輪が、うらやましかった」

今はその戒めもない。

魔獣としての枷はいらないと、リアムはただの男として生きると覚悟を決めると、拘束していた縄がほどけた。

こんな愛に満ちた行動に、ルーナはリアムに嫁いだ歓びに震えた。

「私に穴埋めさせてください。もう寂しい想いなんてさせませんから」

「……あぁ。このどうしようもない願い、叶えてくれるか? 私の愛する妻よ」

「ーーはいっ! もちろんですわ!」

愛してますとリアムの耳元でささやき、気持ちがあふれ出して耳を食む。

諦めの悪さはルーナの長所だ。

雪が降りだす月明かりの下、ルーナはリアムとともに森へと戻るのだった。

***

それからアイスノ王国には人と獣が交わったことで新しい種族が誕生した。

森で暮らす種族であったが、王家との関わりは強く、定期的に交流を深めていた。

国の滅亡を象徴する獣が、人間の妻を前に甘く惚気る姿は国民を驚かせる。

こうしてアイスノ王国に生まれし姫君と巨大な狼は結ばれ、幸せに暮らすのだった。

【完】