「今まで育ててくださって……愛してくださりありがとうございました!」

「ルーナ……」

「……会いに行きます。父上と姫たちに旦那様を紹介させてくださいね」

それがいつ叶うかはわからない。

一生認めてもらえないかもしれない。

今、認めてもらえないままに逃げ出すことはずるいのかもしれない。

「帰りましょう、旦那様」

「……あぁ」

愛する心は決して恥じるものではないのだから。

悲しくてやりきれない気持ちはある。

それでも前を向いて生きていたい。

「泣いてもいい」

繊細なルーナの心にリアムがそっと寄り添う。

「何度だって会いに行こう。家族なのだから」

「旦那様……」

「王女を嫁に……。オレを魔獣として扱った人間への当てつけだった」

それは人々に恐れられる魔獣・フェンリルとしての嘆きだ。

心は人と変わりないのに、世界の悪を押し付けられた。

だから国の英雄となって王女を要求してやろう。

そうして戦争において牙を振るった。

多くの血の匂いに、赤く濡れた身体。

魔獣と何ら変わりない現実に、腹いせと言わんばかりの意地で王女を求めた。