「お姉さま……」

人の住まう華美な部屋に通され、そこでも見張りがついておりルーナはベッドに顔をうずめて泣いていた。

明るくハツラツとしたルーナが泣いてばかりなことに戸惑うシルヴィアであったが、ついに動き出す。

「お姉さまと二人きりでお話がしたいの。部屋から出て行ってちょうだい」

「しかし……」

「これは命令よ!」

頑固に胸を突き出して騎士に命じ、部屋から追い出してしまう。

してやったりと誇らしげに口角をあげると、シルヴィアはソファーの上に置かれたカバンを持ってルーナのもとへと歩いていく。

大きなボストンバッグは膨らみをつぶす音をたて、ベッドの上に乗せられた。

「私のお姉さまはそんなに弱かったかしら?」

「シルヴィア……?」

「危なっかしいところは多い。ですがそんなことはどうでもよくなるほどに愛情に満ちた方です」

ふんっと細っこい腕でルーナの手首を引っ張った。

縄で縛られていた手首にはくっきりと締め跡がついている。

痛々しい傷にシルヴィアはそっと手を重ね、温もりを分け合った。

「お姉さまはあの狼を愛していらっしゃるのですね?」

「……うん。とっても……心から愛してるわ」

抱きしめたくなるのは。
唇を寄せたくなるのは。

愛おしさに、独占欲を抱くのはリアムだけ。

慈愛に満ちたルーナが父王に逆らってまで手を伸ばす深い愛情だった。