(竹芝からは、ずっとそばに置きたいのは専属秘書としてかって尋ねられたけど……そりゃあもちろん専属秘書として仕事のパートナーとしても支えてもらいたいけれど、それだけじゃない。恋人の期間なんて必要ないぐらい、俺は桃花ちゃんに一生そばで……)
ちょうど桃花の体調がイマイチになった前後から仕事が忙しくなったせいで、もうずっと渡せないままでいる。
誰かに贈り物をするからと、こんなに緊張してソワソワしているのも生まれて初めてだ。
(せっかく桃花ちゃん、最近は調子が良さそうなのに。こんなに忙しくなるんだったら、もっと早めに時間を作れるように調整しておけば良かった)
とはいえ、仕事ができるところを彼女に見せる好機だと思って、日々業務に明け暮れる毎日だ。
総悟は組んでいた腕を解くと指先を絡め直すと、桃花を見上げながら返答した。
「ごめんね、桃花ちゃん、話をちゃんと聞いてあげられなくて」
「いいえ、副社長はお忙しいので仕方がありません」
桃花がそっと瞼を閉じると伏し目がちになった。
総悟の心臓がドクンと大きく跳ね上がった。
専属秘書として採用した際にはツンツンした印象があったけれども、一緒に過ごす内にふんわりした印象の方が強くなっていった桃花だったが、最近はとにかく綺麗の一言に尽きる。
元々の素材自体がそもそも悪くはないのだけれど、最近は特に綺麗だった。
艶やかなアッシュグレイの髪はいつも乱れなく綺麗にまとめ上げられている。肌の色は白いけれども健康的で、くるんとカールを描く睫毛と大きめの瞳は愛らしい。薄化粧だから清楚な印象はあるのだけれど、桜色の唇は少しだけぽってりとしていて官能的ですらあった。
膨らんだ乳房にくびれた腰に優美な曲線を描く臀部。ジャケットの裾から覗く手首、タイトスカートから覗くすっと伸びた脚。女性らしい体つきが、特に最近は強調されているようである。
優雅な所作や立ち居振る舞いは、まるで上流階級の人間であるかのように美しかった。
(なんだろう、最近すごく綺麗で落ち着かない……)
総悟はゴクリと唾を呑んだ。
早くまた彼女にこの身を沈めたい。そうしたら、きっと極上の幸せに辿り着けそうだ。
だがしかし、湧き上がる欲望を、ここは社内だと言い聞かせて、なんとか胸の奥底に沈めることに成功した。
すると、机を挟んで向こうに移動していた桃花が、総悟に向かって淡々と告げてくる。
「話したい件につきましては、もう解決しましたから結構です」
なんとなく総悟としては不安を覚えた。