『だったら、俺が両親の代わりにいつか君にプレゼントしてあげるよ。君の大好きな獅童くんをさ』

『え? 獅童くんを?』

『うん、俺って金持ちだからさ。君が欲しいものを買ってあげちゃうよ。約束する』

『お母さんが言ってました。親の金のプレゼントはかっこ悪いって』

『ええ、手厳しいな。じゃあ、俺が会社の副社長ぐらいになったらにしようか?』

 ふと、総悟は桃花の好きな特撮に出てくる司令官のことを思い出した。
 ちょっと軽口を叩くキャラで、大事な時に新しい武器なんかを授けてくれる。
 総悟はその司令官の口調を真似して話し掛けてみる。

『俺が君に獅童を授けてあげよう……ってね』

 総悟が軽口を叩くと、桃花から笑顔が溢れた。

『ふふ、お兄ちゃん、面白い人なんだね。獅童くんの司令官の喋り方に似てた』

『そうかな? 誰かに喜んでもらえるんなら、こういうキャラでいくのも悪くないのかもね』

 少しだけ二人で喋った後――
 桃花はうとうとしはじめて、総悟の肩に何度か頭をぶつけてきた。

『おじいちゃんとおばあちゃんが来るまで眠りなよ』

『うん、ありがとう』

 そうして、とろんとしたまま桃花が告げる。

『お兄ちゃん。ちゃんと偉くなって、桃花に獅童くんをプレゼントしてちょうだいね』

『約束するよ――ちゃんと君に獅童くんをプレゼントしてあげるからさ』

 桃花は小さな体を総悟に預けて眠りに就いた。

 彼女の温もりは――辛くて心細かった総悟に一筋の希望を与えてくれた。

『約束しちゃったから、この子にちゃんとプレゼントを渡すまでは……頑張ってみようかな』

 総悟は頬を伝う熱い涙を拭う。

 この時の総悟はまだ知らなかった。
 
 二人が互いの言葉を支えにして生きていき、将来的にその道が再び交わった時に、奇跡が起こって――

 本来の約束とは違う形だったけれど――総悟が桃花に獅童をプレゼントする約束を果たすことを。


(Fin)