「My assistant is so demanding and she is a real micromanager.」

(エドワルド社長は、僕の秘書は口うるさくてすごく細かいって話したわよね……)

 すると、二階堂副社長が桃花へと視線を移してくる。
 流し目で見られると、心臓がドキンと跳ねる。

(何……?)

 そうして、二階堂副社長はエドワルド社長へと視線を移し、極上の笑みを浮かべながら告げた。

「Oh,I’m quite lucky I suppose. My assistant always mekes time to help me out. She is so very very cute.」

 ドクン。
 桃花の心臓が跳ね上がる。
 わりとゆっくり喋ってくれたので、桃花でも聞き取れた。
 頭の中で意味を咀嚼して考える。

『……それなら、俺は幸運だ。俺の専属秘書は俺のためにいつも時間を割いてくれる、すっごく可愛い子なんだ』

 もしかしたら、自分にとって都合の良い聞き間違えかもしれないけれど……

(二階堂副社長、先方にいったいぜんたい何を話して……!)

 桃花は羞恥に駆られつつも、面と向かって褒められたことに戸惑いを覚える。

「Thank you so much for helping me today. Well, I should get going.」

「Thank you for coming to our company. Don’t work too hard.」

 そうして、エドワルド社長のことを見送ると、医務室の中には二階堂副社長と桃花の二人きりになった。

「二階堂副社長のおかげで色々と助かりました。本当にありがとうございます」

 桃花が椅子から立ち上がりざま御礼を告げようとしたところ、立ち眩みを起こしてクラリと倒れそうになる。
 すると、さっと立ち上がった二階堂副社長が彼女の身体をさっと支えた。かと思えば、さっと横抱きにされてしまう。

「きゃっ……!」

「さっきの社長さんもそうだけど、桃花ちゃんも頑張りすぎ」

 そうして、医務室のベッドの上に運ばれると、まるで壊れ物のようにふんわりと優しく横たえられた。

「まだ就業時刻です! ベッドに横にならなくても大丈夫ですから……!」

 すると、二階堂副社長が珍しく険しい表情を浮かべていた。
 怒らせるような真似をしただろうかと桃花は困惑してしまう。

「桃花ちゃんが真面目なのは良いことだけど、無理は良くないよ」

「え?」

 ギシリ。
 ベッドが軋んだ音がしたかと思うと、二階堂副社長が乗り上げてきたので、さらにおかしな動揺が走った。
 彼の長い指が彼女の顔に近づいたかと思うと、ほつれた髪に触れられる。

「な、な、な……ちょっと、ここは職場で……!」

 桃花が顔を真っ赤にしながら抗議をする。

(二階堂副社長は何を考えてるの……!?)