「え……?」
突然目が覚めて、私は驚いた。一瞬ここが何処だか分からなかったからだ。
低い天井に、蛍光灯がぶら下がっている……。
「蛍光灯……? 蛍光灯!?」
慌てて、ガバッと飛び起きて部屋を見渡し驚いた。
「う、嘘‥‥‥! こ、ここ……私の部屋だ!」
しかも部屋と言っても賃貸マンションではない。ここは実家だったのだ。
「何で実家に……?」
訳が分からず、部屋を見渡す。カーテンからは太陽の光が差している……と言う事は、今は夜ではないということだ。
「もしかして、あれは全部夢だったのかな……?」
ステラという名の伯爵令嬢で暮らしていた世界。優しい両親に、王子という身分でありながら食い意地の張ったイケメンなエド‥‥…。
私は、ひょっとして長い長い夢を見ていたのだろうか?
そんなことをぼんやり考えながら、何気なく時計を見ると時刻は7時を少し過ぎていた。
そこで一気に現実に引き戻される。
「いけない! 会社に行かなくちゃ!」
あの会社は遅刻や欠勤を許さない、ブラック企業だ。
悲しいことに、染みついていた社畜根性で自然と身体が動いてしまった。
クローゼットを開けてカジュアルスーツに着替えて階下に降りていくと、台所から母が驚いた様子で私を見た。
久しぶりに会う母に、思わず緊張が走る。
「真由美! そんな姿で一体何処へ行くの!?」
「お、おはよう。ええと……仕事に……?」
「仕事って……だって、仕事は……」
すると騒ぎを聞きつけてか、ワイシャツ姿の父が姿を現した。
「真由美、一体どうしたというんだ? いつもならまだ寝ている時間じゃないか」
「え? だから仕事に行くつもりなんだけど……?」
父と母との関係は良くなかった。一人暮らしを始めてからは一度も会ってもいない。こんな風に会話をするのも久しぶりで、どんな顔をすればよいのか分からない。
「まさか、仕事って……真由美! 記憶が戻ったのか!?」
「そうなの? 真由美!」
「え? 記憶が戻ったって……?」
すると両親が顔を見合わせ、父が教えてくれた。
「真由美。お前は一月前、マンションで倒れていたところを管理人が発見したんだ。そして病院に運ばれて、次に目が覚めた時は記憶喪失になっていたんだぞ?」
「記憶喪失……?」
「そうよ、自分の名前も私たちが誰かも分からなくなっていたわ。それどころか日常生活も1人で送れなくなっていたものだから、会社も辞めてマンションも引き払ったのよ」
「え……?」
父と母の話は驚くべきものだった――
****
あの後、朝食を食べながら両親から詳しく話を聞いた。
23日間の連続勤務を終えた私は、ベッドの上で意識を失ってしまっていたらしい。
出勤時間になっても出社しない私に会社は何度も連絡を入れたが、一向に連絡が取れない。
そこで上司が管理人と共に、部屋を訪ねたところ意識を無くしていた私を発見した。
慌てた2人は急いで救急車を呼んで、そのまま私は病院に運ばれて緊急入院。
翌日に目が覚めたものの……私はまるで別人になったかの如く記憶を失っていたそうだ――
「やっぱり、この身体にはステラが入っていたのかな……」
両親の話によると目覚めた私は自分が誰かもわからず、何も出来なかったし、見るもの全てに驚いていたそうだ。
車やバス、頭上を飛ぶ飛行機に驚く。家電製品の便利さには大喜びしていたという。
確かにあの世界に比べると、この世界は便利なもので溢れているだろう。
「それにしても暇だな……」
ゴロリと寝返りを打って部屋の時計を見れば、11時になろうとしていた。
「仕事もしない生活って、こんなにも暇なんだ……」
かと言ってアナログ生活? が長かったからか、スマホやPCをいじる気にもならない。
「……アルバイトでも始めようかな」
両親からは、1年くらいは仕事を休んでゆっくり過ごせば良いと言われていた。
恐らく会社から私がどのような勤務体系だったっか、聞いていたのだろう。医者からは過労死寸前だったと診断を受けていたらしいし。
やはり、両親なりに私のことを心配してくれていたのだろう。生活のことは何も心配することは無いと言われたからだ。
「……うん、やっぱり甘えて、少しゆっくりさせてもらおう」
こうして私のニート? 生活が始まった――
突然目が覚めて、私は驚いた。一瞬ここが何処だか分からなかったからだ。
低い天井に、蛍光灯がぶら下がっている……。
「蛍光灯……? 蛍光灯!?」
慌てて、ガバッと飛び起きて部屋を見渡し驚いた。
「う、嘘‥‥‥! こ、ここ……私の部屋だ!」
しかも部屋と言っても賃貸マンションではない。ここは実家だったのだ。
「何で実家に……?」
訳が分からず、部屋を見渡す。カーテンからは太陽の光が差している……と言う事は、今は夜ではないということだ。
「もしかして、あれは全部夢だったのかな……?」
ステラという名の伯爵令嬢で暮らしていた世界。優しい両親に、王子という身分でありながら食い意地の張ったイケメンなエド‥‥…。
私は、ひょっとして長い長い夢を見ていたのだろうか?
そんなことをぼんやり考えながら、何気なく時計を見ると時刻は7時を少し過ぎていた。
そこで一気に現実に引き戻される。
「いけない! 会社に行かなくちゃ!」
あの会社は遅刻や欠勤を許さない、ブラック企業だ。
悲しいことに、染みついていた社畜根性で自然と身体が動いてしまった。
クローゼットを開けてカジュアルスーツに着替えて階下に降りていくと、台所から母が驚いた様子で私を見た。
久しぶりに会う母に、思わず緊張が走る。
「真由美! そんな姿で一体何処へ行くの!?」
「お、おはよう。ええと……仕事に……?」
「仕事って……だって、仕事は……」
すると騒ぎを聞きつけてか、ワイシャツ姿の父が姿を現した。
「真由美、一体どうしたというんだ? いつもならまだ寝ている時間じゃないか」
「え? だから仕事に行くつもりなんだけど……?」
父と母との関係は良くなかった。一人暮らしを始めてからは一度も会ってもいない。こんな風に会話をするのも久しぶりで、どんな顔をすればよいのか分からない。
「まさか、仕事って……真由美! 記憶が戻ったのか!?」
「そうなの? 真由美!」
「え? 記憶が戻ったって……?」
すると両親が顔を見合わせ、父が教えてくれた。
「真由美。お前は一月前、マンションで倒れていたところを管理人が発見したんだ。そして病院に運ばれて、次に目が覚めた時は記憶喪失になっていたんだぞ?」
「記憶喪失……?」
「そうよ、自分の名前も私たちが誰かも分からなくなっていたわ。それどころか日常生活も1人で送れなくなっていたものだから、会社も辞めてマンションも引き払ったのよ」
「え……?」
父と母の話は驚くべきものだった――
****
あの後、朝食を食べながら両親から詳しく話を聞いた。
23日間の連続勤務を終えた私は、ベッドの上で意識を失ってしまっていたらしい。
出勤時間になっても出社しない私に会社は何度も連絡を入れたが、一向に連絡が取れない。
そこで上司が管理人と共に、部屋を訪ねたところ意識を無くしていた私を発見した。
慌てた2人は急いで救急車を呼んで、そのまま私は病院に運ばれて緊急入院。
翌日に目が覚めたものの……私はまるで別人になったかの如く記憶を失っていたそうだ――
「やっぱり、この身体にはステラが入っていたのかな……」
両親の話によると目覚めた私は自分が誰かもわからず、何も出来なかったし、見るもの全てに驚いていたそうだ。
車やバス、頭上を飛ぶ飛行機に驚く。家電製品の便利さには大喜びしていたという。
確かにあの世界に比べると、この世界は便利なもので溢れているだろう。
「それにしても暇だな……」
ゴロリと寝返りを打って部屋の時計を見れば、11時になろうとしていた。
「仕事もしない生活って、こんなにも暇なんだ……」
かと言ってアナログ生活? が長かったからか、スマホやPCをいじる気にもならない。
「……アルバイトでも始めようかな」
両親からは、1年くらいは仕事を休んでゆっくり過ごせば良いと言われていた。
恐らく会社から私がどのような勤務体系だったっか、聞いていたのだろう。医者からは過労死寸前だったと診断を受けていたらしいし。
やはり、両親なりに私のことを心配してくれていたのだろう。生活のことは何も心配することは無いと言われたからだ。
「……うん、やっぱり甘えて、少しゆっくりさせてもらおう」
こうして私のニート? 生活が始まった――