「はぁ〜……残りはこれだけかぁ」
今日もベッドで眠りにつき、在りし日の自分の部屋で目覚めた私。
スナックやお煎餅らが詰め込まれた段ボール箱を覗き込んで、ため息をつく。
エドという予想外の存在が現れたことで、着実に私の大切なお宝が減ってきている。
「何とか補充できればな……元の世界に戻れれば、補充出来るのかな?」
そんなことをポツリと呟き、ふと思った。
私は本当に元の世界に戻りたいのだろうか?
両親との仲は、はっきりいって良くはなかった。
子供の頃から教育熱心な両親に、一流国立大学に合格しろとプレッシャーをかけられていた。
両親の期待に添えるよう、一生懸命勉強したものの結局不合格。結局、一流どころか二流の大学しか合格できなかった。
そんな私に両親は見切りをつけ、授業料こそ出してくれたものの存在を無視されるような態度を4年間取られてしまった。
就職試験もことごとく落ち、やっと就職が決まったのは聞いたこともない中小企業。
もう既に両親から見放されていた私は、卒業と同時に家を出て学生時代にアルバイトしてためたお金でマンションを賃貸して一人暮らしを始めた。
ブラック企業に就職した私を唯一心配してくれたのは兄だけだったのだが……。
「両親からは疎まれ、社畜としてこき使われて……また元の世界に戻れば同じような生活が待っているのに?」
そう考えれば、今ステラとして生きている生活のほうがずっと良いのではないだろうか?
両親は良い人たちだし、ステラを苦しめていた男たちは成敗? したのだから。
「う〜ん……そう考えると、今の生活も悪くはないかな?」
魔女には私がこの身体に入ってしまった原因を探ってもらうことをお願いしている。もし、判明すれば元の身体に戻ることを勧められるかも……?
「よし、やっぱり『魂の交換』について調べてもらうのはやめにしてもらおう! 私はずっと、この身体でステラとして生きていく。それでいいじゃない!」
気持ちを切り替え、食糧と充電を終えたモバイルバッテリーをエコバッグに詰め込むと、早速私はいつものようにゴロリと横たわり、目を閉じた――
****
パリッパリッパリッ……
何か、硬いものをかじるような音が聞こえてくる……。そう、まるで煎餅をかじるような……。
「え? お煎餅?」
その瞬間、一気に頭が覚醒してガバッと飛び起きた。すると……。
「あ、おはよう。ステラ」
何と私の部屋で、エドがお煎餅を食べているではないか。
「ちょ、ちょっと!! 何勝手に食べてるんですかっ!?」
「あ……ごめん。国に帰る前にステラに挨拶しておこうと部屋に来てみるとエコバッグを抱えている姿が目に入ったもので、つい……」
悪気があるのか無いのか、再びエドは煎餅をパリンと噛み砕く。
「言ってる側から食べないで下さい!! って言うか……国に帰るってどういうことですか?」
「ちょっと用事が出来たからさ。……あ? もしかして俺がいなくなると寂しいと思っているのかな?」
エドが嬉しそうに笑う。
「は? そんなこと思っていませんよ。ただ、大学はどうするのかと思っただけです」
「そんなに長い間国に帰るわけじゃないさ。せいぜい4〜5日だよ。だからそれまで……」
急に真顔になるエド
「それまで……? 何ですか?」
一体何を言い出すのだろう?
「ポテチと煎餅……残しておいてくれよ?」
「はぁ!? 何言っちゃってくれてるんですか!」
「おっと、急がなければ汽車に間に合わない。それじゃ、俺が帰ってくるまで待っててくれよ」
エドは笑顔で手を振ると部屋から出て行ってしまった。
「な、何なの? 一体?」
結局、エドに貴重なお煎餅を食べられてしまった。
「全く……人が寝ている部屋に勝手に入り込んで、挙げ句に貴重な食糧を食べていくなんて。いくら王子でも許しがたいわ。国から帰ってきたら、絶対に文句言ってやるんだから」
ブツブツ言いながら、私は着替えを始めた。
しかしこの後、私はとんでもないことに巻き込まれ……エドに文句をいう機会を失ってしまうことになるのだった――
今日もベッドで眠りにつき、在りし日の自分の部屋で目覚めた私。
スナックやお煎餅らが詰め込まれた段ボール箱を覗き込んで、ため息をつく。
エドという予想外の存在が現れたことで、着実に私の大切なお宝が減ってきている。
「何とか補充できればな……元の世界に戻れれば、補充出来るのかな?」
そんなことをポツリと呟き、ふと思った。
私は本当に元の世界に戻りたいのだろうか?
両親との仲は、はっきりいって良くはなかった。
子供の頃から教育熱心な両親に、一流国立大学に合格しろとプレッシャーをかけられていた。
両親の期待に添えるよう、一生懸命勉強したものの結局不合格。結局、一流どころか二流の大学しか合格できなかった。
そんな私に両親は見切りをつけ、授業料こそ出してくれたものの存在を無視されるような態度を4年間取られてしまった。
就職試験もことごとく落ち、やっと就職が決まったのは聞いたこともない中小企業。
もう既に両親から見放されていた私は、卒業と同時に家を出て学生時代にアルバイトしてためたお金でマンションを賃貸して一人暮らしを始めた。
ブラック企業に就職した私を唯一心配してくれたのは兄だけだったのだが……。
「両親からは疎まれ、社畜としてこき使われて……また元の世界に戻れば同じような生活が待っているのに?」
そう考えれば、今ステラとして生きている生活のほうがずっと良いのではないだろうか?
両親は良い人たちだし、ステラを苦しめていた男たちは成敗? したのだから。
「う〜ん……そう考えると、今の生活も悪くはないかな?」
魔女には私がこの身体に入ってしまった原因を探ってもらうことをお願いしている。もし、判明すれば元の身体に戻ることを勧められるかも……?
「よし、やっぱり『魂の交換』について調べてもらうのはやめにしてもらおう! 私はずっと、この身体でステラとして生きていく。それでいいじゃない!」
気持ちを切り替え、食糧と充電を終えたモバイルバッテリーをエコバッグに詰め込むと、早速私はいつものようにゴロリと横たわり、目を閉じた――
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パリッパリッパリッ……
何か、硬いものをかじるような音が聞こえてくる……。そう、まるで煎餅をかじるような……。
「え? お煎餅?」
その瞬間、一気に頭が覚醒してガバッと飛び起きた。すると……。
「あ、おはよう。ステラ」
何と私の部屋で、エドがお煎餅を食べているではないか。
「ちょ、ちょっと!! 何勝手に食べてるんですかっ!?」
「あ……ごめん。国に帰る前にステラに挨拶しておこうと部屋に来てみるとエコバッグを抱えている姿が目に入ったもので、つい……」
悪気があるのか無いのか、再びエドは煎餅をパリンと噛み砕く。
「言ってる側から食べないで下さい!! って言うか……国に帰るってどういうことですか?」
「ちょっと用事が出来たからさ。……あ? もしかして俺がいなくなると寂しいと思っているのかな?」
エドが嬉しそうに笑う。
「は? そんなこと思っていませんよ。ただ、大学はどうするのかと思っただけです」
「そんなに長い間国に帰るわけじゃないさ。せいぜい4〜5日だよ。だからそれまで……」
急に真顔になるエド
「それまで……? 何ですか?」
一体何を言い出すのだろう?
「ポテチと煎餅……残しておいてくれよ?」
「はぁ!? 何言っちゃってくれてるんですか!」
「おっと、急がなければ汽車に間に合わない。それじゃ、俺が帰ってくるまで待っててくれよ」
エドは笑顔で手を振ると部屋から出て行ってしまった。
「な、何なの? 一体?」
結局、エドに貴重なお煎餅を食べられてしまった。
「全く……人が寝ている部屋に勝手に入り込んで、挙げ句に貴重な食糧を食べていくなんて。いくら王子でも許しがたいわ。国から帰ってきたら、絶対に文句言ってやるんだから」
ブツブツ言いながら、私は着替えを始めた。
しかしこの後、私はとんでもないことに巻き込まれ……エドに文句をいう機会を失ってしまうことになるのだった――