「カラコン……?」

「ウィッグって何だ?」

恐らく聞いたこともない単語なのだろう。魔女とエドが首を傾げる。

「はい、カラコンとはカラーコンタクトです。目に入れて瞳の色を変えることが出来るレンズです。ウィッグというのは頭に被せるカツラです。……カツラって言われて分かります?」

「カツラなら知ってるぞ。俺も使っていたし、父親も現に……おっと! これは国家秘密だった!」

エドは咄嗟に口元を抑える。
そうか、国王はカツラなのか……。だけど、それが国家秘密になるとは。しかも、その国家秘密をペラペラと口にしてしまうエド。
もう彼の前ではあまり秘密事項は口にしないほうが良いかもしれない。

「目の中にレンズを入れるなんて……お、恐ろしすぎるわ! 一体あなたはどんな世界からやってきたのよ!」

両肩を抱きかかえて震える魔女。
齢80を超えても、恐ろしいものは恐ろしいのだろう。

「あ〜大丈夫ですよ。私はコンタクトもカラコンも入れたことがありませんけど、最初は異物感があるかもしれませんが、そのうち慣れるみたいですよ。でもつけたまま寝るのは良くないみたいです。眼球にへばりついて、中々取りづらくなるみたいですから」

「ふ〜ん……」
「そうなのか?」

この世界にはない、カラコンの説明を2人にする私って一体……?

「要は、あの小娘は別に魔法で姿を変えていたってことではないのね? 小道具で変装をしていたんでしょう?」

「ええ。そういうことですね」

魔女の言葉に頷く。

「ふ〜ん……でも、ステラはそういうものは持っていなかったんだろう? 一体カレンは何者なんだ?」

「フッフッフッ……私には、もうカレンの正体が分かっていますよ。エド」

「何!? 本当か!?」

「それで、カレンは何者なの!?」

エドと魔女が驚いた様子で尋ねてくる。

「はい、カレンはずばり……コスプレイヤーです!!」

そうだ、赤いカラコンにロン毛の銀髪なんて絶対に何らかのキャラクターのコスプレに違いない。現に、カレンはゲームオタクでもあるようだし。

「コス……」
「プレイヤー……?」

増々訳が分からないと言った様子で首を捻る魔女とエド。そこで、今度は2人に一からコスプレイヤーについての説明をする羽目になるのだった――



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「ふぅ〜……それにしても、今日は思いがけない出来事のせいで帰りがすっかり遅くなってしまいましたねぇ」

帰りの馬車の中で、エドに話しかけた。

「そうだな、まさかカレンが現れるとは……まぁ、少しは予想していたかな?」

「え? そうだったのですか? 鈍いエドにしては中々やりますね」

「誰が鈍いんだ? それよりもステラ。カレンは相当君を恨んでいたようだな」

「ええ……まぁ、そうみたいですね」

一体誰のせいで相当恨まれているのか分かっているのだろうか?
私は目の前に座るエドを呆れた眼差しで見つめる。

「でも安心していいぞ。俺に良い考えがあるから任せてくれ」

ニッコリ笑うエド。

「は、はぁ……ありがとうございます」

一体どんな良い考えがあるというのだろう? なんとなく嫌な予感を抱きながら、私は頷くのだった――