3人の女性は何故か私達を睨みつけている。

私は彼女たちに見覚えは無いが、おそらくステラを目の敵にしているのだろう。
厄介事はごめんなので、私は黙ることにした。
下手に何か口にして、ますます相手の怒りを買うなんてごめんだ。

何しろ本来の私の計画では、目立たず細く長く……空気のように生きていこうと決めていたのだから。

……まぁ、色々あって当初の計画よりは予定が狂ってきてはいるのだけれど。

「さぁ、カレンさん。一体、何故ステラさんを断罪しようとするのかしら?」

青い髪の女性が腕組みして尋ねてきた。

「そ、それ……は……」

すると何故か言葉に詰まるカレン。

「答えられるはずがないわよね?」

栗毛色の女性が鼻で笑う。

「ええ、当然よ。だって本来断罪されるべき相手はステラさんではなくて、カレンさん。あなたなのだから!」

黒髪ロン毛の女性がビシッとカレンを指さしてきた。
その言葉にカレンの両肩がビクリと跳ね、ブルブルと震えだした。

「ふ~ん……なるほどねぇ」

納得したように頷くと、カレンが私を睨みつけてきた。

「ちょっと何よ! どうして驚くこともせずに納得しているのよ!」

「だってこの状況を見る限り、一目瞭然じゃないですか。カレンさんには3人の取り巻き男性がいた。そして、ここにいる方々も3人。そして何やら激怒されている様子を見れば、誰だって分かりますよ」

すると、青い髪の女性が頷く。

「そうよ。私はジミーと婚約していたの。私達の婚約は親同士が勝手に決めたことで、彼は気に入らなかったみたいだけど。それでも私なりに彼と歩み寄ろうとしていたわ。それなのに、カレンさん! あなたは私という婚約者がいるにも関わらず、彼に近づいて誘惑したでしょう!」

「私だって同じよ! ハリスとの仲は確かにあまり良くはなかったけれど、それでも将来は結婚するのだから、花嫁修業を頑張ってきたって言うのに……!」

「私とケントの結婚は双方の家門のために大事なことなのよ! それなのに、よくも妨害してくれたわね!?」

3人の女性たちはヒステリックに叫び、カレンを睨みつける。

う~ん……ジミー、ハリスにトビーか……。いずれにしても初めて耳にする名前だ。
多分、あの3人のことに間違いないだろう。
けれど、顔と名前が一致しない私には関係ない話だ。

私……ここにいる必要無くない?

そこで思い切って声をかけることにした。

「あの~……」

「「「何っ!?」」」

すると一斉に牙を向いたかのように、彼女たちは私を一斉に睨みつけてきた。

「私……教室に行ってもいいでしょうか?」

「何ですって!? 駄目よ! 話は終わっていないのよ!」

カレンが驚いたように叫ぶ。けれど、3人の女子学生達の反応は違う。

「別にいいんじゃない?」

「そうね、ステラさんには関係ない話だし……」

「いいですよ。用があるのはカレンさんだけですから」

そして女子学生たちは一斉に頷いた。

「「「どうぞ」」」

やった! この場を抜けられる!

「それでは、皆様。お先に失礼します」

私はそれだけ告げると、校舎まで逃げるように走った。

「ちょ! ちょっと!! 何処に行くのよ! ステラさんっ!!」

3人に取り囲まれたカレンをその場に残したまま――