「そう、それです! ステラさん……あなた、一体彼らに何をしたのですか!? いつもなら私の迎えに来てくれるのに、今朝は誰も来てくれなかったのですよ? だから今朝は自力で大学に来なければならなかったのですからね? エイドリアンだって大学に来なくなったのは、ステラさんのせいでしょう!?」

ビシッと私を指差すカレン。

「なるほど……やはり、思っていたとおり大学に来れなくなってしまったのですね?」

つまり、彼らは鏡の前から離れられなくなってしまったというわけだ。
恐るべし、魔女の作った惚れ薬。

「その言い草……やっぱり何かしたのね!? さっさと言いなさいよ!」

もはやカレンは地で話している。
やっぱりカレンは……。私の中で彼女に対する疑問が膨れつつも、答えた。

「何をしたのかですか? カレンさんがしたことと同じことをしただけですよ?」

「何ですって……ま、まさか……」

「ええ。昨日あなたがエドとデートを楽しんでいる間に、あの3人に惚れ薬を飲ませました。強力な惚れ薬をね」

「それじゃ、あなたに惚れさせるようにしたのね!?」

怒りを露わにするカレン。

「私が自分に惚れさせるように? まさか、そんな面倒なことするはずないでしょう? 四六時中つきまとってくる相手は1人で十分ですよ。それにもし仮にそうだとしたら、今頃3人は私にへばりついているはずでしょう?」

そのつきまとう相手とは……もちろん、エドのことだ。

「でも……確かに言われてみればそうかもしれないわ。それじゃ、一体誰に惚れさせるように仕掛けたのよ?」

「それは自分自身ですよ」

「は?」

ステラが首を傾げる。

「つまり、彼らの前に鏡を置いて惚れ薬入りのお茶を飲ませたのですよ。飲み終わる頃には全員手鏡が無ければ、帰れない状況でした。多分今頃は家に引きこもって、鏡の前から離れられないのでは? 今日カレンさんの迎えに誰一人行かなかったのも、そのためです。もう彼らは自分しか愛せなくなってしまったのでしょう」

「な、なんですって……なんてことをしてくれたのよ!! この世界の悪女のくせに!」

ついに、カレンは私が疑問に思っていた言葉を口にした。
やはり彼女も私と元コンビニ店員同様……『魂の交換』が行われたに違いない。

「ここは、私の理想の世界なのに……ヒロインは私で、ステラは嫌われ者の悪女だったはずでしょう!? それなのにエドワード様を奪うなんて! 彼はこの世界のヒーローで、私の恋人になるはずだったのに!」

エドがこの世界のヒーロー?
う〜ん……確かに顔はものすごいイケメンだし、王族という身分ではあるけれども……。
けれど立場的には第6王子で王位継承権からは外れている。それに私から言わせれば、単に食い意地の張った男性としか思えない。

考え事をしていると、再びカレンは文句を言ってきた。

「悪女なら、悪女らしく私とエドワード様に断罪されなさいよ!」

断罪……? 流石にこの言葉は聞き捨てならない。

「あの、何故私が断罪されなければならないのですか? 私、何かしましたっけ?」

「そ、それは……」

カレンが言葉に詰まったとき……。

「ちょっと、お二人とも。私達もその話に混ぜて貰えないかしら?」

「「え??」」

突然声をかけられて2人で同時に振り向くと、3人の女性が険しい目を向けて立っていた――