小瓶の蓋を開けると、中からオレンジ色の煙がモクモクと立ち込めてきた。

「うわっ! な、なんだ! これは!」

「ステラ! 何したんだよ!」

「け、煙!?」

私は持っていたハンカチで口と鼻を覆った。

「いい? 今からあなた達3人はステラ・アボットの指示に絶対に従うのよ。分かったら頷きなさい」

すると煙に包まれた3人は一斉に黙ってコクリと頷く。

「それでは、放課後16時に私が指定する場所で待っているのよ。いい?」

私は彼らに番地を伝えると、最後に告げた。

「それじゃ、私が今からパチンと手を叩くと今の会話を全て忘れること。ただし今日の16時には指定した場所に全員で行くように。分かったら頷きなさい」

私の言葉に、再び無言で頷く3人。
そこで私はパチンと手を叩いた。するとその直後……。

「あれ……? 俺達、こんなところで何してるんだ?」

「さ、さぁ……と言うか、ステラ! 何故お前がここにいるんだよ!」

「そうだ、お前なんかに用は無いんだよ!」

3人は私に憎しみの目を向けてくる。
もう彼らは私の催眠下にいるのだ。余計なことは口にせず、立ち去ろう。

「はい、では失礼します」

鞄を持って立ち上がると、私たちは彼らの間を通り抜けて次の教室へと向かった――




****


 この日、エドは始終カレンと一緒に過ごしていた。

講義の席では2人は一番前の列に座り、私は最後尾に座った。大学は全ての教室が階段教室になっているので、最後尾の席に座るとエドとカレンの様子が良く見える。

「ふっふっふっ……カレンはすっかり浮かれているみたい。相手は何しろ自分の狙っていたエドだからね~」

カレンは満面の笑みを浮かべて、エドに話しかけている。一方のエドは引きつった笑みをうかべながら、時折助けを求めるような視線を私に送ってくる。

ごめんね、エド。
私の目的を達成させるために……悪いけど、今日1日犠牲になってもらいます!

いよいよ本日、私に嫌がらせをしてきたカレンに取り巻き3人衆に復讐することができるのだから。

私はウキウキしながら放課後になるのを待った。



****


――15時半


全ての授業が終了すると、私はカバンを抱えて誰よりも一番に教室を飛び出した。
一刻も早く、彼らよりも前にあの店に行かなければ――


「魔女っ!」

乱暴に店の扉を開けると、私は魔女の店に駆けこんだ。

「あぁ、来たわね。ステラ」

魔女は私がプレゼントしたスマホで遊んでいる最中だった。

「それにしてもこのスマホって言うのは本当に便利よね~。私もステラが住んでいた世界に行ってみたいわ」

スマホを見ながら、楽しそうに笑う魔女。

「それなら、今度私と一緒に手を繋いで眠ってみませんか? 私が元居た世界の部屋に行くことが出来ますよ」

私の言葉に魔女が身を乗り出してきた。

「うそっ!? 何それ!? 行く! 行きたいに決まってるでしょ!」

「分かりました、では近いうちにお連れします。なので、ご協力お願いしますよ」

「ええ。任せてちょうだい。それじゃ、準備を始めましょうか?」

「はい! 魔女さん」

こうして私たちはカレンの取り巻3人衆を迎える準備を始めた――