――午前7時半

「「「……」」」

両親と顔を突き合わせての朝食の席。
私は、どのようにしてあの4人に復讐してやろうか思案しながら食事をしていた。
両親は時折チラチラと私の方を見つめているのが少し気になったが、今はそれどころではなかった。

食後のコーヒーを飲もうかとカップに手を伸ばした時、不意に父が声をかけてきた。

「ステラや」

「はい、何でしょうか?」

「それで……一つ、聞きたいことがあるのだが……今、良いだろうか」

「ええ。いいですよ」

頷くと、両親は互いの目を合わせて頷きあい……父が咳払いした。

「ゴホンッ! では尋ねよう。その、昨夜は……エド様と何処まで行ったのだね?」

「え!?」

その言葉にドキリとする。
まさか……私とエドが異次元空間? へ転移した瞬間を見られてしまったのだろうか!?

「どうしたの!? そんなに驚いて?」

「もしや、やましいことでもあるのか!?」

両親が大げさなほどに反応する。
やはり見られていたのかもしれない。けれど、何処までいったかなんて説明できるはずもない。
言えば、今度こそ頭がおかしくなったと言われて入院させられてしまうかもしれない。
こうなったら、曖昧な表現でごまかそう。

「そ、そうですね……とりあえず、行けるところまで行ってみました」

「なんだと!? いけるところまでいってしまったのか!?」

「まぁ! なんてこと! そ、それでエド様はどうされたの? メイドの話では帰ってしまったそうだけど?」

「ええ、そうですね……まんまとしてやられてしまいました」

まさか先に目を覚ましたエドに、食糧が詰まったエコバッグを奪われてしまうとは……。

「何ぃっ!? し、してやられてしまっただと! それでは泣き寝入りしたのか!?」

父が興奮混じりに叫ぶ。泣き寝入りだなんて、大げさな……。大体何故そんなに憤慨しているのだろう?

「ええ、確かにしてやられてしまいましたけど、でも大丈夫です。ちゃんと責任はとってもらいますので」

そう。エドには残りの4人の復讐に手を貸してもらうのだ。恐らく彼らは私の呼び出しに応じるはずはないだろうから。

「そうなのね……男として、責任を取らせるというわけね?」

「ええ、そのとおりです」

コーヒーを飲みながら返事をする。

「そうか、それなら良かった……やはり誠意は見せてもらわなければな」

父が途端に笑顔になった。

そこへ、丁度よいタイミングでフットマンがダイニング・ルームに現れた。

「ステラ様、エド様がお迎えにいらっしゃいました」

「そう、逃げずに来たのね?」

立ち上がると、何故か両親も同時に席を立つ。

「我々も行こう」
「ええ、そうね」

「え? 別に私一人で大丈夫ですけど?」

「いいや。こういうことは、はっきりさせないと」
「そうよ、とても大切なことなのだから」

「は、はぁ……? では、行きましょうか」

私達は3人でエドの待つエントランスへ向かった――