私とエドは応接室で母と会話をしていた。
「まぁまぁ、良くぞ我が家へお越しいただきました。あなたが最近、ステラの友達になってくださったエド様ですね?」
エドを連れて帰宅すると母は笑顔で出迎え……今に至っている。
「友達ではなく恋人です。ええ、仰るとおり彼女には色々とお世話になっております」
エドが何気なく爆弾発言をする。
「え……? まぁあ! そうだったのですか!? いやだわ、ステラったら。こんなに素敵な恋人が出来たなんて、何故黙っていたのかしら? ほんと、見れば見るほど素敵な方ですね。あのロクデナシとは大違いですわ」
ロクデナシ……言わずもがな、エイドリアンのことだろう。
「ええ。仰るとおりです。ステラほど魅力的な女性に、あの元婚約者はもったいなさすぎて渡せませんね」
「まぁ! そこまで娘のことを思ってくださるのですね? ありがとうございます!」
頷くエドに感激する母。
駄目だ……母は勘違いしている。エドの『もったいなさすぎて渡せませんね』と言うのは食べ物のことを指しているのだということに気づいていない。
「エド! それよりもちょっと私の部屋へ行きましょう!」
これ以上妙なことを口にされては堪らない。
「ええ!?」
「では、お母様。失礼します」
エドの腕を掴むと、急ぎ足で応接室を後にした。
「ま、待ってくれよ、ステラ! 本当に部屋へ行くのか?」
「ええ、当然です。これ以上母の前で余計な話をされたくはありませんからね」
あのままエドを放置していれば、何を口走るか分かったものではない。食べ物の話から、しまいに私の抱えている秘密まで喋ってしまうかもしれない。
ズンズン歩き続け、自分の部屋に到着すると扉を開けた。
「さぁ、入って下さい。エド」
「あ? ああ……分かったよ」
躊躇いがちにエドが中に入ってくると扉を締めた。
「エド、座って下さい」
部屋の中央に置かれたソファを勧めると、素直に無言で座るエド。それを見届けると私も向かい側に座った。
「いいですか? エド。私の家族には、ステラの身体の中身は全くの別人だということは知らないし、バレては困るのです。だから絶対に余計な話はしないで下さい」
「別に内緒にしていてもいいが……でも、何故なんだ?」
「家族は誰も、そんな突拍子もない話を信じてくれないからですよ。頭がイカれてしまったと思われて、病院に入院させられてしまうかもしれません」
「分かった、ステラが黙っていてくれと言うなら黙っていよう。その代わり……」
エドは立ち上がると、私の隣に座ってきた。
「ええ、分かっていますよ。口止め料として、食べ物が欲しいんでしょう?」
「え? あ、あぁそうなんだ。それで、なにか物珍しい食べ物があるのかい?」
「……そうですねぇ。ならこれで手を打ちましょう」
クローゼットに行くと、扉を開けた。中には私の食料箱が隠されている。
そこからポテチの袋を取り出すと、エドの元へもってきた。
「はい、どうぞ。ポテトチップ青海苔味です」
「え!? な、何だ? この袋……どんな仕組みでできているんだ? まるで風船みたいだ!」
窒素が入った真空パックなど、きっとこの世界のエドはみたことが無いのだろう。
「詳しい仕組みは分かりませんが、味は保証します」
「凄いな……これがニホンという国で作られた技術力なのか……」
真剣な眼差しで窒素の入ったポテチを真剣な眼差しで見つめるエド。
「これ、食べてもいいか?」
「ええ、どうぞ。ついでにお願いしていいですか?」
「お願い? 何だ?」
「今から私はこのベッドの上で寝るので、見届けていただけませんか?」
「……は?」
エドがポカンとした顔で私を見つめた――
「まぁまぁ、良くぞ我が家へお越しいただきました。あなたが最近、ステラの友達になってくださったエド様ですね?」
エドを連れて帰宅すると母は笑顔で出迎え……今に至っている。
「友達ではなく恋人です。ええ、仰るとおり彼女には色々とお世話になっております」
エドが何気なく爆弾発言をする。
「え……? まぁあ! そうだったのですか!? いやだわ、ステラったら。こんなに素敵な恋人が出来たなんて、何故黙っていたのかしら? ほんと、見れば見るほど素敵な方ですね。あのロクデナシとは大違いですわ」
ロクデナシ……言わずもがな、エイドリアンのことだろう。
「ええ。仰るとおりです。ステラほど魅力的な女性に、あの元婚約者はもったいなさすぎて渡せませんね」
「まぁ! そこまで娘のことを思ってくださるのですね? ありがとうございます!」
頷くエドに感激する母。
駄目だ……母は勘違いしている。エドの『もったいなさすぎて渡せませんね』と言うのは食べ物のことを指しているのだということに気づいていない。
「エド! それよりもちょっと私の部屋へ行きましょう!」
これ以上妙なことを口にされては堪らない。
「ええ!?」
「では、お母様。失礼します」
エドの腕を掴むと、急ぎ足で応接室を後にした。
「ま、待ってくれよ、ステラ! 本当に部屋へ行くのか?」
「ええ、当然です。これ以上母の前で余計な話をされたくはありませんからね」
あのままエドを放置していれば、何を口走るか分かったものではない。食べ物の話から、しまいに私の抱えている秘密まで喋ってしまうかもしれない。
ズンズン歩き続け、自分の部屋に到着すると扉を開けた。
「さぁ、入って下さい。エド」
「あ? ああ……分かったよ」
躊躇いがちにエドが中に入ってくると扉を締めた。
「エド、座って下さい」
部屋の中央に置かれたソファを勧めると、素直に無言で座るエド。それを見届けると私も向かい側に座った。
「いいですか? エド。私の家族には、ステラの身体の中身は全くの別人だということは知らないし、バレては困るのです。だから絶対に余計な話はしないで下さい」
「別に内緒にしていてもいいが……でも、何故なんだ?」
「家族は誰も、そんな突拍子もない話を信じてくれないからですよ。頭がイカれてしまったと思われて、病院に入院させられてしまうかもしれません」
「分かった、ステラが黙っていてくれと言うなら黙っていよう。その代わり……」
エドは立ち上がると、私の隣に座ってきた。
「ええ、分かっていますよ。口止め料として、食べ物が欲しいんでしょう?」
「え? あ、あぁそうなんだ。それで、なにか物珍しい食べ物があるのかい?」
「……そうですねぇ。ならこれで手を打ちましょう」
クローゼットに行くと、扉を開けた。中には私の食料箱が隠されている。
そこからポテチの袋を取り出すと、エドの元へもってきた。
「はい、どうぞ。ポテトチップ青海苔味です」
「え!? な、何だ? この袋……どんな仕組みでできているんだ? まるで風船みたいだ!」
窒素が入った真空パックなど、きっとこの世界のエドはみたことが無いのだろう。
「詳しい仕組みは分かりませんが、味は保証します」
「凄いな……これがニホンという国で作られた技術力なのか……」
真剣な眼差しで窒素の入ったポテチを真剣な眼差しで見つめるエド。
「これ、食べてもいいか?」
「ええ、どうぞ。ついでにお願いしていいですか?」
「お願い? 何だ?」
「今から私はこのベッドの上で寝るので、見届けていただけませんか?」
「……は?」
エドがポカンとした顔で私を見つめた――