「「「え???」」」
全員で声を揃えてベンチの青年を見下ろすと、彼はため息をついた。
「うるさいな……人が折角気持ちよく眠っていたのに起こされるし、挙げ句に目の前で痴話喧嘩まで始めるとは」
「ち、痴話喧嘩……? いや、これは違う! 単なる口論だ」
エイドリアンが不機嫌そうに返事をする。それにしても何故、こんなに上から目線的な物言いをするのだろう?
ひょっとして、この青年の身なりがみすぼらしいので見下しているのかもしれない。
「そうか? 俺の目には3人で痴話喧嘩しているようにしか見えないがな。大体彼女は婚約者なんだろう? それなのに何故待ち合わせ場所に女性連れで来てるんだ? 誰がどう見てもおかしいだろう? たとえ親の命令で不本意で婚約したとしてもだ、相手の女性を尊重するべきだろう?」
この青年……私の言いたいことを代弁してくれている。……尤も、少しばかり言い回しが気になるところもあるけれど。
すると、青年の言葉にエイドリアンが怒りで? 顔を赤く染める。
「な、何だよ! 部外者のくせに、好き勝手いいやがって……お前のように得体のしれないやつに説教されるいわれはない! 大体俺たちの話に関係ないだろう!」
「関係ないっていうのなら、無関係な人間の前で喧嘩はやめてくれないか? 迷惑なんだよ」
おおっ! すごい! もっと言ってやって下さい!
密かに心の中で見知らぬ青年を応援する私。
「も、もういい! 行こう、カレン」
エイドリアンはカレンの手を繋いだ。
「え? で、でもステラ様はどうするのですか?」
カレンはチラリと私を見るが、その口元は笑っている。
「知るか、あんな女! とりあえず、待ち合わせ場所には来てやったんだ。俺の役目は果たしたんだ」
それだけ言うと、エイドリアンはカレンを連れて去って行った。
……なるほど、そういうことか。
エイドリアンは私という婚約者がいながら、別の女性と交際している……ということでいいのかな?
その時、ふと視線を感じた。
すると例の男性が私をじっと見て……いるのだろう。何しろ前髪がボサボサで肝心の目元がよく見えないのだ。
「あの……お騒がせしました」
「全くだよ。折角昼寝をしていたのに」
この男性、恐らく誰にでも歯に衣着せぬ言い方をするのだろう。だけど、迷惑をかけたのは事実。それに、私の肩を持ってくれた……のだろう。多分。
「はい、仰るとおりです。お昼寝の邪魔をしてご迷惑をかけてしまったこと、誠に申し訳ございませんでした。心よりお詫び申し上げます。それでは失礼致します」
自分が全て悪いとは思わないけれども、ここは丁寧に謝罪したほうが得策だ。
元・社畜の勘がそう告げている。
そして背を向けて立ち去ろうとした時――
「待ちなよ」
背後から声をかけられた。
「何でしょう?」
もしかして謝罪としてお金でも要求されるのだろうか?
「行かせて良かったのか?」
「え?」
「さっきの男、婚約者なんだろう?」
「アハハハ……そう、みたいですね」
「なんだよ、そうみたいだって」
「ええ、まぁ……色々とありまして」
何しろこの世界で目覚めてまだ5日。しかもステラの記憶は何一つ無い。その挙げ句、婚約者がいると言う話を聞かされたのが今日なのだから。
エイドリアンが婚約者と言われても少しも実感など湧かない。
「まぁ、別にどうでもいいけど。俺には関係ないし」
「そうですね」
だったら何故尋ねてきたのだろう? すると男性は再び腕組みすると俯いた。
きっと今からまた寝るのだろう。
「それでは、失礼します。あ、あまり長い時間うたた寝して風邪引かないようにしてくださいね」
余計なお世話と思いつつ一声かけると、私はその場を後にした――
全員で声を揃えてベンチの青年を見下ろすと、彼はため息をついた。
「うるさいな……人が折角気持ちよく眠っていたのに起こされるし、挙げ句に目の前で痴話喧嘩まで始めるとは」
「ち、痴話喧嘩……? いや、これは違う! 単なる口論だ」
エイドリアンが不機嫌そうに返事をする。それにしても何故、こんなに上から目線的な物言いをするのだろう?
ひょっとして、この青年の身なりがみすぼらしいので見下しているのかもしれない。
「そうか? 俺の目には3人で痴話喧嘩しているようにしか見えないがな。大体彼女は婚約者なんだろう? それなのに何故待ち合わせ場所に女性連れで来てるんだ? 誰がどう見てもおかしいだろう? たとえ親の命令で不本意で婚約したとしてもだ、相手の女性を尊重するべきだろう?」
この青年……私の言いたいことを代弁してくれている。……尤も、少しばかり言い回しが気になるところもあるけれど。
すると、青年の言葉にエイドリアンが怒りで? 顔を赤く染める。
「な、何だよ! 部外者のくせに、好き勝手いいやがって……お前のように得体のしれないやつに説教されるいわれはない! 大体俺たちの話に関係ないだろう!」
「関係ないっていうのなら、無関係な人間の前で喧嘩はやめてくれないか? 迷惑なんだよ」
おおっ! すごい! もっと言ってやって下さい!
密かに心の中で見知らぬ青年を応援する私。
「も、もういい! 行こう、カレン」
エイドリアンはカレンの手を繋いだ。
「え? で、でもステラ様はどうするのですか?」
カレンはチラリと私を見るが、その口元は笑っている。
「知るか、あんな女! とりあえず、待ち合わせ場所には来てやったんだ。俺の役目は果たしたんだ」
それだけ言うと、エイドリアンはカレンを連れて去って行った。
……なるほど、そういうことか。
エイドリアンは私という婚約者がいながら、別の女性と交際している……ということでいいのかな?
その時、ふと視線を感じた。
すると例の男性が私をじっと見て……いるのだろう。何しろ前髪がボサボサで肝心の目元がよく見えないのだ。
「あの……お騒がせしました」
「全くだよ。折角昼寝をしていたのに」
この男性、恐らく誰にでも歯に衣着せぬ言い方をするのだろう。だけど、迷惑をかけたのは事実。それに、私の肩を持ってくれた……のだろう。多分。
「はい、仰るとおりです。お昼寝の邪魔をしてご迷惑をかけてしまったこと、誠に申し訳ございませんでした。心よりお詫び申し上げます。それでは失礼致します」
自分が全て悪いとは思わないけれども、ここは丁寧に謝罪したほうが得策だ。
元・社畜の勘がそう告げている。
そして背を向けて立ち去ろうとした時――
「待ちなよ」
背後から声をかけられた。
「何でしょう?」
もしかして謝罪としてお金でも要求されるのだろうか?
「行かせて良かったのか?」
「え?」
「さっきの男、婚約者なんだろう?」
「アハハハ……そう、みたいですね」
「なんだよ、そうみたいだって」
「ええ、まぁ……色々とありまして」
何しろこの世界で目覚めてまだ5日。しかもステラの記憶は何一つ無い。その挙げ句、婚約者がいると言う話を聞かされたのが今日なのだから。
エイドリアンが婚約者と言われても少しも実感など湧かない。
「まぁ、別にどうでもいいけど。俺には関係ないし」
「そうですね」
だったら何故尋ねてきたのだろう? すると男性は再び腕組みすると俯いた。
きっと今からまた寝るのだろう。
「それでは、失礼します。あ、あまり長い時間うたた寝して風邪引かないようにしてくださいね」
余計なお世話と思いつつ一声かけると、私はその場を後にした――