「あの、お願いがあるんだけど」
部屋に置かれていた椅子に座ると、早速元コンビニ店員に用件を伝えることにした。
「お願い? どんなお願いですか?」
「今、ここで眠ってみてくれない?」
「「は?」」
私の言葉に首を捻る2人の男性。
「ちょっと、確認したいことがあるのよ。だから今ここで眠ってみて。そのソファならベッド代わりになるよね?」
正面に物が乱雑に置かれたソファを指さした。
「何言ってるんですか!? 眠ってみてよと言われて、はい分かりましたと寝れるはず無いでしょう!」
「俺もそう思う。誰かに見られながら、人は眠るのは難しいものだ」
元コンビニ店員に同調するエド。
「なら、視界に入らないところで見届けていることにするから。それならいいでしょう?」
「冗談じゃないですよ! 俺はこれから理由の分からない大学の会合に参加しなくちゃいけないんですよ! それに明るい場所じゃ眠れないタイプなんです。何を考えているのか知りませんが、無理です。これから出かける準備をしなくちゃならないんで出てってくださいよ!」
こうして私達はものの10分もしないうちに、部屋を追い出されてしまった。
「う〜ん……駄目だったか……」
廊下を歩きながらポツリと呟くと、エドが大真面目な顔つきで尋ねてきた。
「ステラ。一体何がしたかったんだ? あんな中年男の寝ている姿を見ても絵にならないし、つまらないぞ? それとも変な性癖でも持っているのか? だが、寝姿なら俺のほうが様になっているはずだ。そうは思わないか?」
「別に私は寝姿が見たいわけじゃないですよ。そんな変な趣味持ち合わせているとでも思っていたのですか」
「……いや、別に」
一体今の間は何なのだろう?
「それで、今日はこれからどうする? もし何も用事が無いならステラの家に遊びに行ってもいいか?」
「は?」
いきなりの質問に思わず足を止める。それとも私の聞き間違いだろうか?
「今、何て言ったんですか?」
「ステラの家に遊びに行かせてくれ」
目をキラキラさせながら私を見つめてくるエド。きっと彼に尻尾が生えていたなら、ちぎれんばかりに振っているに違いないだろう。
「……もしかして、食べ物が目的ですか?」
「勿論だ」
「即答ですね。でも、生憎今日は駄目ですよ。今夜はエイドリアンと彼の父親が家に来ることになっているんですから」
再び、彼らと顔を合わせるのは……気乗りしないが仕方ない。
「何だって!? 元婚約者が来るっていうのか!? もしかして招いたのか??」
「ええ、そうですけど……って、何でそんな恨めしそうな目で見るんですか!」
「当然だろう? 俺という存在がいるのに、まだ元婚約者に未練があるのか!?」
エドの声が大きいものだから、まだ周囲に残っていた学生たちの耳に届いたのは言うまでもない。
「やっぱりステラ・アボットは悪女だったみたいね」
「仮にも王子を手玉に取るとは……恐ろしい女だ」
うう……エドと一緒にいるだけで、ますます私の評判が悪くなっていく。
「ちょっと来て下さい!」
エドの腕を掴むと、私は廊下を走って人の気配がない空き部屋を見つけて中へ連れ込んだ。
「いいですか? 私が今日エイドリアンとその父親を屋敷に招いたのは理由があるんですよ」
「どんな理由なんだ?」
「それは復讐するためです」
「復讐……? 一体どんな?」
「それはですね……ちょっと、耳を貸して下さい。何処で誰に聞かれるか分かったものではないので」
チョイチョイと手招きすると、エドが耳を貸してきた。
「実はですね……」
ゴニョゴニョと耳元で説明すると、徐々に彼の口元に笑みが浮かぶ。
そして……。
「実に面白い! 俺もその現場を見てみたい! よし! 早速行こう!」
そして私の腕をガシッと掴むと大股で歩き始めた。
「ちょ、ちょっと! 行くって、何処へですか!」
「勿論ステラの家に行くに決まっているだろう? その『ざまぁ』とか、言うものを俺にも見学させてくれ!」
「ええ〜っ!?」
こうして私は野次馬根のエドを連れて、家に帰る羽目になってしまった――
部屋に置かれていた椅子に座ると、早速元コンビニ店員に用件を伝えることにした。
「お願い? どんなお願いですか?」
「今、ここで眠ってみてくれない?」
「「は?」」
私の言葉に首を捻る2人の男性。
「ちょっと、確認したいことがあるのよ。だから今ここで眠ってみて。そのソファならベッド代わりになるよね?」
正面に物が乱雑に置かれたソファを指さした。
「何言ってるんですか!? 眠ってみてよと言われて、はい分かりましたと寝れるはず無いでしょう!」
「俺もそう思う。誰かに見られながら、人は眠るのは難しいものだ」
元コンビニ店員に同調するエド。
「なら、視界に入らないところで見届けていることにするから。それならいいでしょう?」
「冗談じゃないですよ! 俺はこれから理由の分からない大学の会合に参加しなくちゃいけないんですよ! それに明るい場所じゃ眠れないタイプなんです。何を考えているのか知りませんが、無理です。これから出かける準備をしなくちゃならないんで出てってくださいよ!」
こうして私達はものの10分もしないうちに、部屋を追い出されてしまった。
「う〜ん……駄目だったか……」
廊下を歩きながらポツリと呟くと、エドが大真面目な顔つきで尋ねてきた。
「ステラ。一体何がしたかったんだ? あんな中年男の寝ている姿を見ても絵にならないし、つまらないぞ? それとも変な性癖でも持っているのか? だが、寝姿なら俺のほうが様になっているはずだ。そうは思わないか?」
「別に私は寝姿が見たいわけじゃないですよ。そんな変な趣味持ち合わせているとでも思っていたのですか」
「……いや、別に」
一体今の間は何なのだろう?
「それで、今日はこれからどうする? もし何も用事が無いならステラの家に遊びに行ってもいいか?」
「は?」
いきなりの質問に思わず足を止める。それとも私の聞き間違いだろうか?
「今、何て言ったんですか?」
「ステラの家に遊びに行かせてくれ」
目をキラキラさせながら私を見つめてくるエド。きっと彼に尻尾が生えていたなら、ちぎれんばかりに振っているに違いないだろう。
「……もしかして、食べ物が目的ですか?」
「勿論だ」
「即答ですね。でも、生憎今日は駄目ですよ。今夜はエイドリアンと彼の父親が家に来ることになっているんですから」
再び、彼らと顔を合わせるのは……気乗りしないが仕方ない。
「何だって!? 元婚約者が来るっていうのか!? もしかして招いたのか??」
「ええ、そうですけど……って、何でそんな恨めしそうな目で見るんですか!」
「当然だろう? 俺という存在がいるのに、まだ元婚約者に未練があるのか!?」
エドの声が大きいものだから、まだ周囲に残っていた学生たちの耳に届いたのは言うまでもない。
「やっぱりステラ・アボットは悪女だったみたいね」
「仮にも王子を手玉に取るとは……恐ろしい女だ」
うう……エドと一緒にいるだけで、ますます私の評判が悪くなっていく。
「ちょっと来て下さい!」
エドの腕を掴むと、私は廊下を走って人の気配がない空き部屋を見つけて中へ連れ込んだ。
「いいですか? 私が今日エイドリアンとその父親を屋敷に招いたのは理由があるんですよ」
「どんな理由なんだ?」
「それは復讐するためです」
「復讐……? 一体どんな?」
「それはですね……ちょっと、耳を貸して下さい。何処で誰に聞かれるか分かったものではないので」
チョイチョイと手招きすると、エドが耳を貸してきた。
「実はですね……」
ゴニョゴニョと耳元で説明すると、徐々に彼の口元に笑みが浮かぶ。
そして……。
「実に面白い! 俺もその現場を見てみたい! よし! 早速行こう!」
そして私の腕をガシッと掴むと大股で歩き始めた。
「ちょ、ちょっと! 行くって、何処へですか!」
「勿論ステラの家に行くに決まっているだろう? その『ざまぁ』とか、言うものを俺にも見学させてくれ!」
「ええ〜っ!?」
こうして私は野次馬根のエドを連れて、家に帰る羽目になってしまった――