結局……あの後、馬車の中で持参してきた海苔せんべいは全てエドによって完食されてしまった。
「あ〜美味しかった……この海苔せんべいというものは。俺が知っているお菓子というものは甘い物ばかりだからな。世の中にはこんなに美味しい食べ物があったのか。本当にステラと出会えて良かったよ。これからもよろしくな」
私の両手をがっしり握りしめてくるエド。目もくらむようなイケメンにこんなことをされれば大抵世の女性たちはポ〜ッとなってしまうかも知れないが、あいにく私はそうはいかない。
今、エドが私を見る目はまさに捕食者の目だ。
うまそうな獲物を前に、虎視眈々と狙う……。けれど、エドのおかげで手がかりを掴めたのも事実。
それに彼は王子であり、もしかするとこの世界のヒーローなのかもしれない。
「いやです」と断って、逆恨みされるのも好ましくない。私はこの世界で、目立たず細く長く生きていくと決めたのだから。
「はぁ……分かりましたよ」
結局、渋々承諾することにしたのだった――
****
エドが側にいてくれるようになったおかげか、カレンとその取り巻きたちに絡まれることは無くなった。
代わりに、私に対する非難の目を向ける女子学生たちが増えてしまった。
彼女たちは悪女の私が大学のアイドル的存在のエドと一緒にいることが不愉快なのだろう。
しかも。公の場で、私とエドは恋人同士になっているのだから目立って目立って仕方ない。
「エド、もっと離れて歩いていただけませんか?」
放課後の廊下を歩きながら、相変わらずピタリと私からくっついて離れないエド。
「何で? 言ったじゃないか、大学内では俺たちは恋人同士でいようって。いや〜それにしても、実に美味だったな……あの「お好み焼き」だっけ? 今まで色々な料理を口にしてきたけど、ステラのはどれも初体験だよ。本当に忘れられないものだった。これからも俺に衝撃的な初めてを味あわせてくれないか?」
エドの声が廊下に響き渡り、ぎょっとした様子で私達を見つめる学生たち。
「ちょ、ちょっとエド! あまり誤解を招くような発言はやめてもらえませんか?」
小声で耳打ちする私。
「誤解? どこが?」
首を傾げるエドに、もはや私は言葉を無くす。まさか、無自覚だったとは……。
もう何も言うまい。
「ところで……エド、一体何処までついてくるつもりですか?」
「それはこちらのセリフだ。ステラ、一体何処へ向かっているんだよ?」
「……ビンセント教授のところですよ」
「何だって? またあの教授の所へ行くつもりか? 『魂の交換』の授業は当てにならないとか何とか言っていたじゃないか」
「ええ、そうなのですけどね……個人的に聞きたいことがあるんですよ」
「何だって?」
するとエドの顔色が変わる。
「ステラ! 一体個人的に聞きたいことって何なんだ?」
私の両肩を掴むと、顔を覗き込んでくるエド。
ギャ〜ッ!! 破壊力ありすぎる顔を近づけないで欲しい!
「べ、別にそんなこといいじゃありませんか。これは私と教授に関係ある話なのですから……ハッ」
瞬時に自分が拙い言葉を口にしてしまったことに気づく。
「何だ? 2人に関係ある話って……俺には無関係だって言いたいのか?」
「そうです」
「! か、考えるまもなく即答したな……? よし! こうなったら四六時中ステラのそばから離れないぞ! 何処へ行くときもだ! 大学を出てからもだ。それでもいいんだな?」
「ええええっ!?」
なぜ!? なぜそこまでしてエドは私に執着するのだろう?
「うう……分かりましたよ……」
四六時中付き纏われるなんて冗談じゃない。どうせ魔女の話を聞くときだって、同席するに決まっている。
そこで私はやむなく、事情を説明することにしたのだった――
「あ〜美味しかった……この海苔せんべいというものは。俺が知っているお菓子というものは甘い物ばかりだからな。世の中にはこんなに美味しい食べ物があったのか。本当にステラと出会えて良かったよ。これからもよろしくな」
私の両手をがっしり握りしめてくるエド。目もくらむようなイケメンにこんなことをされれば大抵世の女性たちはポ〜ッとなってしまうかも知れないが、あいにく私はそうはいかない。
今、エドが私を見る目はまさに捕食者の目だ。
うまそうな獲物を前に、虎視眈々と狙う……。けれど、エドのおかげで手がかりを掴めたのも事実。
それに彼は王子であり、もしかするとこの世界のヒーローなのかもしれない。
「いやです」と断って、逆恨みされるのも好ましくない。私はこの世界で、目立たず細く長く生きていくと決めたのだから。
「はぁ……分かりましたよ」
結局、渋々承諾することにしたのだった――
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エドが側にいてくれるようになったおかげか、カレンとその取り巻きたちに絡まれることは無くなった。
代わりに、私に対する非難の目を向ける女子学生たちが増えてしまった。
彼女たちは悪女の私が大学のアイドル的存在のエドと一緒にいることが不愉快なのだろう。
しかも。公の場で、私とエドは恋人同士になっているのだから目立って目立って仕方ない。
「エド、もっと離れて歩いていただけませんか?」
放課後の廊下を歩きながら、相変わらずピタリと私からくっついて離れないエド。
「何で? 言ったじゃないか、大学内では俺たちは恋人同士でいようって。いや〜それにしても、実に美味だったな……あの「お好み焼き」だっけ? 今まで色々な料理を口にしてきたけど、ステラのはどれも初体験だよ。本当に忘れられないものだった。これからも俺に衝撃的な初めてを味あわせてくれないか?」
エドの声が廊下に響き渡り、ぎょっとした様子で私達を見つめる学生たち。
「ちょ、ちょっとエド! あまり誤解を招くような発言はやめてもらえませんか?」
小声で耳打ちする私。
「誤解? どこが?」
首を傾げるエドに、もはや私は言葉を無くす。まさか、無自覚だったとは……。
もう何も言うまい。
「ところで……エド、一体何処までついてくるつもりですか?」
「それはこちらのセリフだ。ステラ、一体何処へ向かっているんだよ?」
「……ビンセント教授のところですよ」
「何だって? またあの教授の所へ行くつもりか? 『魂の交換』の授業は当てにならないとか何とか言っていたじゃないか」
「ええ、そうなのですけどね……個人的に聞きたいことがあるんですよ」
「何だって?」
するとエドの顔色が変わる。
「ステラ! 一体個人的に聞きたいことって何なんだ?」
私の両肩を掴むと、顔を覗き込んでくるエド。
ギャ〜ッ!! 破壊力ありすぎる顔を近づけないで欲しい!
「べ、別にそんなこといいじゃありませんか。これは私と教授に関係ある話なのですから……ハッ」
瞬時に自分が拙い言葉を口にしてしまったことに気づく。
「何だ? 2人に関係ある話って……俺には無関係だって言いたいのか?」
「そうです」
「! か、考えるまもなく即答したな……? よし! こうなったら四六時中ステラのそばから離れないぞ! 何処へ行くときもだ! 大学を出てからもだ。それでもいいんだな?」
「ええええっ!?」
なぜ!? なぜそこまでしてエドは私に執着するのだろう?
「うう……分かりましたよ……」
四六時中付き纏われるなんて冗談じゃない。どうせ魔女の話を聞くときだって、同席するに決まっている。
そこで私はやむなく、事情を説明することにしたのだった――