「そ、そんなことよりも! 一体私達に何を飲ませたんですか!?」

何とか私が別の世界の人間だということを隠さなければ!

「そうだ! ステラの言うとおりだ! こんなに心の声を口にしてしまうのは、絶対に何か仕掛けたに違いない!」

エドがテーブルをバンバン叩く。

「あら? よく気づいたわね。ええ、そうよ。あなた達に特別に調合した薬を紅茶に混ぜて出したのよ。本音をぶちまけたくなる薬をね」

魔女はほくそ笑む。

「な、なんですって……よくも汚い真似をしてくれたわね……この卑怯者!」

「よく言った! ステラ! 無断で薬を飲ませるなんて、最低だ! クズだ! カスだ! 性格がネジ曲がった魔女め!」

2人で魔女に文句を言うと、彼女は顔をしかめた。

「はぁ……全く、これだからこの薬はあんまり使いたく無かったんだよ……」

ため息をつく魔女。

「何言ってるのよ! 自分で薬を盛っておきながら、そんなこと言える立場じゃないでしょ!」

「そのとおりだ! だったら初めから飲ませるんじゃない!」

バンバンバンッ! 

エドが更にテーブルを叩き、カップの中の紅茶が揺れ動く。

「ああっ! 全くもう! 落ち着きなさいよ!! 仕方ないでしょう!? あんた達がブツブツ言いながらこの店を覗いていたから、何してたのか聞き出そうとしたのよ!」

魔女が頭を抱える。

「だったら、こんな回りくどい方法を取らなくても素直に尋ねてくれれば良かったじゃないですか!」

「そうだ! ステラの言うとおりだ! 大体、彼女はあんたの作った薬の被害者なんだぞ!」

「……何だって?」

エドの言葉に、魔女が目を見開いた。

「……それはいったいどういうことだい?」

身を乗り出してくる魔女に、私は興奮気味にまくしたてた――



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「……なるほど。それでここへ来たって言うわけね」

魔女が新しい紅茶を注ぐと、私達の前に差し出した。

「……まさか、この紅茶にも変なものを混ぜていないでしょうね?」

「油断するな、ステラ。飲まない方がいい」

私とエドは警戒しながら魔女を見つめる。

「何言ってるんだい? これは正真正銘、ただの紅茶だよ。そんなに疑うなら私が飲んでみるわよ」

魔女は新しいカップをカウンターの上に置くと、紅茶を注いで一気飲みした。

「どう?」

「どうって言われても……」

「うん、さっぱり分からないな」

交互に頷く私とエド。

「そんなに疑うなら、飲まなくたっていいわよ。う〜ん……エイドリアンという名前に聞き覚えはないけれど、ロンドという名字は知っているわ。10年以上前からの顧客だったからね。禿頭の中年で、自分は伯爵家の者だと言ってたわ」

「え……?」

その言葉に、思わず目を見開く。

「あ、あの……ちょっと待って下さい。惚れ薬を買っていたお客というのは……その人物だったのですか?」

「ええ、そうよ」

「フッフッフッ……そういうことなのね……」

「ど、どうしたんだ? ステラ?」

エドが不思議そうに尋ねてくる。

「いえ……分かってしまったんですよ。私がエイドリアンに惚れてしまったのは……彼の父親が絡んでいたってことがですよ!」

「何だって!? そうだったのか!?」

「……そうね。もうあなたの惚れ薬の効果は切れているようだけど……あの伯爵に惚れ薬を売ったのは紛れも無い事実だから。ついでにいうと、もう一つ薬を売っていたわ。その薬を飲むとね……周りの人たちに嫌われてしまう薬よ。この2つをセットでいつも買ってもらっていたわ」

頷く魔女。

「なるほど、そんな危険な薬を売っていたわけですね……」

どうりでステラが周囲から嫌われていたわけだ。

おのれ……ロンド伯爵、およびエイドリアンめ。
あの親子のせいでステラの人生が狂い、私まで巻き添えになってしまったのだ。

ポケットの中にある惚れ薬を取り出した。

「ど、どうしたんだ? ステラ。何故その惚れ薬を……?」

「あら! その惚れ薬は……」

「私、決めました。この惚れ薬を使って……エイドリアンに復讐します!」

私はきっぱり言い切った――