「エドッ!!」

店の外で待っているはずのエド。絶対にカレンに狙われているはずだ。
扉を開けて外に飛び出ると、彼の姿が見えない。

「そ、そんな……!」

まさか、もうカレンの毒牙にかかってしまったのだろうか?

「エドッ! エドッ!」

必死で辺りを見渡していると……。

ポンッ

いきなり背後から肩を叩かれた。

「キャアアアアアッ!!」
「ウワアッ!」

思わず悲鳴があがると同時に、別の叫び声もあがる。

「え……?」

恐る恐る振り向くと、そこには目を見開いたエドがいた。

「エ……エド……?」

「ど、どうしたんだよ? そんな大きな声をあげて……驚かせないでくれよ」

「驚いたのはこっちの方です! 何処へ行っていたんですか!?」

「どこって……そこのベンチで待っていたんだよ」

巨木の下に設置してあるベンチを指差すエド。

「な、何だ……そうだったんですね……良かった……」

安堵のため息をつくと、エドが首を傾げる。

「それにしてもどうしたんだ? 急に俺の名前を口にしながら店から飛び出てくるなんて」

「それは……エドが心配だったからですよ。カレンに惚れ薬でも飲まされてしまったのではないかと思って」

「惚れ薬だって?」

「ええ、何しろエドは食べ物で目が眩むような人ですよね?」

失礼なことを言っているのは百も承知だ。すると……。

「アハハハ……何言ってるんだよ。俺が簡単に食べ物で釣られてしまうと思っているのかい? それにカレンから貰った食べ物を口にするはずないだろう?」

「思っているに決まっているじゃありませんか。現に私のおにぎり目当てで友達になったんですよね?」

「……そんなことより、魔女との話は終わったのか?」

今、さり気なく話を逸らせたよね?

「いいえ、まだですけど……もう心配なので一緒に中へ入りましょう」

「いいのか?」

「はい、行きましょう」

そして私はエドを連れて再び店内へ戻った。


「お帰りなさい、彼氏は無事だったの?」

魔女が頬杖をついて尋ねてきた。

「ええ、無事でした。でも彼氏ではありませんよ。友達です、単なる友達」

「冷たいなぁ。ステラは……俺たち恋人同士だろう?」

エドが背後から声をかけてくる。

「それは大学内だけでの話ですよね? あ、そう言えばエドは魔女組合の名簿を持っていましたよね?」

「あぁ、持ってるけど?」

すると魔女が驚いた様子でエドを見た。

「え!? な、何故魔女組合の名簿を持っているのよ! あの名簿を持てるのは特別な身分の者たちだけなのに!」

そうか……魔女はエドが王族であることを知らないのだっけ。

「その名簿、見せてくれる? もしかすると誰が惚れ薬を作ったか分かるかもしれないわ」

「そういうことなら、いいですよ」

エドはポケットから名簿を取り出すと、魔女に差し出した。

「どれどれ……」

魔女は早速名簿をぺらぺらとめくり、私達はその様子を見つめる。

やがて……。

「あ! きっとこの人物よ! 彼女が作った惚れ薬を飲まされていたのかもしれないわ」

「え……?」
「ステラ、この番地って……」

私とエドは顔を見合わせた――