「そ、そんな……!」
冗談じゃない。何故私がこんな理由の分からない世界に放り込まれなければならないのだろう。
しかも周囲から思いっきり嫌われている悪女になってしまうとは。
……かと言って、元の社畜時代の生活に戻りたいわけでは無いけれど。
そこで、ふと気づく。
「……あの、魔女さん」
「何?」
「私……自分以外に確実あと一人、『魂の交換』が行われた人物を知っているんですけど。後、疑わしき人物が一人」
「え!? そうなの!? 何でそんな重要な話を後からするのよ!」
魔女が身を乗り出してきた。
「しょうがないじゃないですか! 今思い出したんですから!」
「それじゃ、確実にあと一人と分かっている人物を教えて頂戴。どういう状況で、この世界で目覚めたかもね」
そこで、私は自分の分かる範囲でかいつまんで魔女に説明した。
魔女は黙って話を聞き……少しの間、考え込む。
「う〜ん……なるほど。今の話で共通するのは……ふたりとも、この世界に来る直前、疲労困憊だったというわけね」
「まぁ、そういうことでしょうね」
確かに私もコンビニ店員も疲れ切っていた。それこそ過労死寸前に。
ん? 過労死……? まさか……
自分の顔が青ざめていくのが分かった。
「ちょ、ちょっとどうしたの? 顔の色が真っ白になったわよ!?」
魔女も私の異変に気づいたのか、慌てたように声をかけてきた。
「あ、あの魔女さん。実は、少しだけステラのことについて耳にしたことがあるのですけど……。私がこの身体に入る前、彼女は、もうこれ以上、生きていたくないーって騒いでいたらしいです」
「え? そうなの?」
魔女が目を見開く。
「これって……?」
「そうね。重要な話に違いないわ。まぁ、私の方でも色々調べてみるけれど……やっぱり魔女の集会で議題に上げるのが一番確実かもしれないわね。それでもう一人怪しい人物っていうのは誰なの?」
「はい、大学の同級生でカレンという名前の女性なのですけど。彼女も何だか私と同類の臭いを感じます」
「何ですって……カレン……?」
魔女の顔色が変わる。え? 何? 何か怖いんだけど!?
「カレンがどうしたんですか?」
「ちょっと待って頂戴!」
魔女は身をかがめると、カウンターの中を覗きんで何かごそごそと探している。
「あった! これだわ!」
ドンッと分厚いファイルのような物をカウンターに乗せる魔女。
「これは何でしょう?」
「これはね……私の大事な顧客名簿よ! 私の薬を買いに来た人には個人情報を貰っているのよ。名前や住んでいる場所、連絡先。趣味、趣向から親の年収までね。私の命の次に大事な物よ!」
フッフッフッと笑う魔女。
「はぁ……でも、何故名簿を出したのですか?」
そんな命よりも大事な顧客名簿を人に見せても良いのだろうか……?
「ええ、その名前に聞き覚えがあったからよ。確か最近も大量に惚れ薬を買っていったのよね。連れの男性と一緒に」
「そうなのですか……?」
何だろう? すごく……嫌な予感がする!
「あ、あったわ! 名前はカレン・デュラー。年齢は19歳、子爵家令嬢ね。今から
約10日程前に大量に惚れ薬を買いに来ているわ!」
「カレン・デュラー?」
何だか花の名前みたいだ。だけど、10日ほど前って……?
魔女の話はまだ続く。
「この女性と一緒に惚れ薬を買っていった人物がいるわね。名前はエイドリアン・ロンドよ。同じく19歳の青年で、彼も大量に惚れ薬を購入しているわ」
「え……? ええっ!? エイドリアン!?」
「そうよ。知り合いなの?」
「え、ええ……そうです、ね……」
知り合いも何も……ロクデナシのステラの元、婚約者じゃないの――!!
冗談じゃない。何故私がこんな理由の分からない世界に放り込まれなければならないのだろう。
しかも周囲から思いっきり嫌われている悪女になってしまうとは。
……かと言って、元の社畜時代の生活に戻りたいわけでは無いけれど。
そこで、ふと気づく。
「……あの、魔女さん」
「何?」
「私……自分以外に確実あと一人、『魂の交換』が行われた人物を知っているんですけど。後、疑わしき人物が一人」
「え!? そうなの!? 何でそんな重要な話を後からするのよ!」
魔女が身を乗り出してきた。
「しょうがないじゃないですか! 今思い出したんですから!」
「それじゃ、確実にあと一人と分かっている人物を教えて頂戴。どういう状況で、この世界で目覚めたかもね」
そこで、私は自分の分かる範囲でかいつまんで魔女に説明した。
魔女は黙って話を聞き……少しの間、考え込む。
「う〜ん……なるほど。今の話で共通するのは……ふたりとも、この世界に来る直前、疲労困憊だったというわけね」
「まぁ、そういうことでしょうね」
確かに私もコンビニ店員も疲れ切っていた。それこそ過労死寸前に。
ん? 過労死……? まさか……
自分の顔が青ざめていくのが分かった。
「ちょ、ちょっとどうしたの? 顔の色が真っ白になったわよ!?」
魔女も私の異変に気づいたのか、慌てたように声をかけてきた。
「あ、あの魔女さん。実は、少しだけステラのことについて耳にしたことがあるのですけど……。私がこの身体に入る前、彼女は、もうこれ以上、生きていたくないーって騒いでいたらしいです」
「え? そうなの?」
魔女が目を見開く。
「これって……?」
「そうね。重要な話に違いないわ。まぁ、私の方でも色々調べてみるけれど……やっぱり魔女の集会で議題に上げるのが一番確実かもしれないわね。それでもう一人怪しい人物っていうのは誰なの?」
「はい、大学の同級生でカレンという名前の女性なのですけど。彼女も何だか私と同類の臭いを感じます」
「何ですって……カレン……?」
魔女の顔色が変わる。え? 何? 何か怖いんだけど!?
「カレンがどうしたんですか?」
「ちょっと待って頂戴!」
魔女は身をかがめると、カウンターの中を覗きんで何かごそごそと探している。
「あった! これだわ!」
ドンッと分厚いファイルのような物をカウンターに乗せる魔女。
「これは何でしょう?」
「これはね……私の大事な顧客名簿よ! 私の薬を買いに来た人には個人情報を貰っているのよ。名前や住んでいる場所、連絡先。趣味、趣向から親の年収までね。私の命の次に大事な物よ!」
フッフッフッと笑う魔女。
「はぁ……でも、何故名簿を出したのですか?」
そんな命よりも大事な顧客名簿を人に見せても良いのだろうか……?
「ええ、その名前に聞き覚えがあったからよ。確か最近も大量に惚れ薬を買っていったのよね。連れの男性と一緒に」
「そうなのですか……?」
何だろう? すごく……嫌な予感がする!
「あ、あったわ! 名前はカレン・デュラー。年齢は19歳、子爵家令嬢ね。今から
約10日程前に大量に惚れ薬を買いに来ているわ!」
「カレン・デュラー?」
何だか花の名前みたいだ。だけど、10日ほど前って……?
魔女の話はまだ続く。
「この女性と一緒に惚れ薬を買っていった人物がいるわね。名前はエイドリアン・ロンドよ。同じく19歳の青年で、彼も大量に惚れ薬を購入しているわ」
「え……? ええっ!? エイドリアン!?」
「そうよ。知り合いなの?」
「え、ええ……そうです、ね……」
知り合いも何も……ロクデナシのステラの元、婚約者じゃないの――!!