――放課後
教室中の刺すような視線を浴びながら、ようやく本日の講義が全て終了した。
「つ、疲れた……」
思わず机に突っ伏していると、エドが声をかけてきた。
「大丈夫か? どうしてそんなに疲れたんだ?」
「それはですね……エドが私にかまうからですよ」
顔をエドの方に向ける。
「俺が?」
「ええ、そうです。さっきだってエドが私のカバンを持って教室に入ったものだから全員驚いた目で見ていたじゃないですか。大体エドは王子様ですよね? いいんですか? 私の下僕みたいな真似をしても」
「別に下僕のつもりじゃない。だって俺はステラの恋人だからな」
そしてあろうことか、エドは私の左手をすくい上げると手の甲にキスをした。
ひええええ! な、何てことしてくれるのよ!
途端に、まだ教室に残っていた女子学生たちから悲鳴が上がる。
「きゃあああ!! キス! キスしたわ!」
「いいえ、あれは無理やりキスさせたのよ!」
「そうね、あの悪女ならやりかねないわ!」
ますます私に憎悪の目を向ける女子学生たち。……もう駄目だ、これ以上ここにはいられない!
カバンを抱えると席を立ち、ダッシュで出口に向かって駆け出そうとし……。
「え?」
突然近くにいた気の強そうな巻き毛の女子学生がサッと足を伸ばしてきた。
「キャ!」
転ぶ!
そう思った次の瞬間。
ガシッ!
突然背後から私の腰に手を回し、抱きとめられた。
「大丈夫か? ステラ」
助けてくれた人物は当然……。
「エ……エド……」
後ろを振り返るも、エドは私を見ることもなく足を伸ばして転ばそうとした女子学生を見つめている。
「君……名前は?」
「え? 私はマリー・ブランと申します。爵位は……」
「爵位なんてどうでもいい。一体どういうつもりだ?」
「え……ど、どういうつもりって……」
「今、足を伸ばしてステラを転ばせようとしていただろう?」
「そ、それ……は……」
憧れのエドに責められ、みるみる内に青ざめていくマリーと名乗る女子学生。
「彼女は俺の大切な女性なんだよ。次に彼女に何かした場合、大学に訴えるよ。君を辞めさせることくらい簡単に出来るんだから」
「も、申し訳ございません……」
ガタガタ震えながら、エドに謝るマリー。
そしてその様子を教室に残った学生たちは息を殺して見守りつつも、刺すような視線は相変わらずだ。
何? この……重苦しい雰囲気は!? 何度も言おう、私は絶対に目立ちたくないということを!
「エド、も、もういいです。ほら、この通り怪我も何もしていないのですから。だから、行きましょう!」
踵を返し、逃げるように教室を出る。その後ろを当然のようについてくるエド。
「ハァ〜……息が詰まりそうだった……」
廊下に出て歩きはじめると、ようやく胸を撫で下ろす。
「それにしても、この大学の学生は随分ステラのことを嫌っているようだな。……そんなに悪事を働いてきたのか?」
エドが尋ねてくる。
「そんなこと、知りませんよ……だって、私は1週間前以前の記憶が全く無いのですから」
「そうか……。ここ数日、ステラと一緒にいて考えていたことがあるんだ。何故、こんなにもステラは大学中の学生たちから嫌われているかって」
「あの〜……いくら何でもそれは言い過ぎではありませんか? 大学中なんて……」
しかし、エドは私の言葉に耳を貸さない。
「……俺がこの大学に留学生としてやってきたのは1ヶ月前なんだ」
「はぁ?」
いきなり、何を言い出すのだろう。
「そして、その時からステラ。君は大学内で全校生徒から嫌われていた。……多分」
ビシッと私を指してくるエド。
「ええ!? 全校生徒から!? それに何ですか? その多分っていうのは」
「多分というのは気にしなくていい。それにしても何故だと思う? ステラ」
「だから、私に理由を尋ねないでくださいってば。こっちが知りたいくらいなんですから。はぁ〜……もう、大学……辞めようかな……」
もしエドの言葉が本当だとしたら、そんなに嫌われているのに大学に通う意味がはたしてあるのだろうか?
「大学を辞める!? それは駄目だ! いくら女性とはいえ、知識や教養を身につけるのは大事なことだと思わないのか? 嫌われているというだけで、屈してどうする? そのために、俺がステラの側にいるんじゃないか? 例えステラがどんな悪女だろうと俺は味方だ。そのことは忘れないで欲しい」
そしてじっと真剣な目で見つめてくるエド。
「エド……」
「うん。何だい? ステラ」
「ひょっとして……まだ、私に食べ物を要求していません?」
「あ? もしかして分かった?」
「はぁ〜……やっぱりね……」
私は深いため息をついた――
教室中の刺すような視線を浴びながら、ようやく本日の講義が全て終了した。
「つ、疲れた……」
思わず机に突っ伏していると、エドが声をかけてきた。
「大丈夫か? どうしてそんなに疲れたんだ?」
「それはですね……エドが私にかまうからですよ」
顔をエドの方に向ける。
「俺が?」
「ええ、そうです。さっきだってエドが私のカバンを持って教室に入ったものだから全員驚いた目で見ていたじゃないですか。大体エドは王子様ですよね? いいんですか? 私の下僕みたいな真似をしても」
「別に下僕のつもりじゃない。だって俺はステラの恋人だからな」
そしてあろうことか、エドは私の左手をすくい上げると手の甲にキスをした。
ひええええ! な、何てことしてくれるのよ!
途端に、まだ教室に残っていた女子学生たちから悲鳴が上がる。
「きゃあああ!! キス! キスしたわ!」
「いいえ、あれは無理やりキスさせたのよ!」
「そうね、あの悪女ならやりかねないわ!」
ますます私に憎悪の目を向ける女子学生たち。……もう駄目だ、これ以上ここにはいられない!
カバンを抱えると席を立ち、ダッシュで出口に向かって駆け出そうとし……。
「え?」
突然近くにいた気の強そうな巻き毛の女子学生がサッと足を伸ばしてきた。
「キャ!」
転ぶ!
そう思った次の瞬間。
ガシッ!
突然背後から私の腰に手を回し、抱きとめられた。
「大丈夫か? ステラ」
助けてくれた人物は当然……。
「エ……エド……」
後ろを振り返るも、エドは私を見ることもなく足を伸ばして転ばそうとした女子学生を見つめている。
「君……名前は?」
「え? 私はマリー・ブランと申します。爵位は……」
「爵位なんてどうでもいい。一体どういうつもりだ?」
「え……ど、どういうつもりって……」
「今、足を伸ばしてステラを転ばせようとしていただろう?」
「そ、それ……は……」
憧れのエドに責められ、みるみる内に青ざめていくマリーと名乗る女子学生。
「彼女は俺の大切な女性なんだよ。次に彼女に何かした場合、大学に訴えるよ。君を辞めさせることくらい簡単に出来るんだから」
「も、申し訳ございません……」
ガタガタ震えながら、エドに謝るマリー。
そしてその様子を教室に残った学生たちは息を殺して見守りつつも、刺すような視線は相変わらずだ。
何? この……重苦しい雰囲気は!? 何度も言おう、私は絶対に目立ちたくないということを!
「エド、も、もういいです。ほら、この通り怪我も何もしていないのですから。だから、行きましょう!」
踵を返し、逃げるように教室を出る。その後ろを当然のようについてくるエド。
「ハァ〜……息が詰まりそうだった……」
廊下に出て歩きはじめると、ようやく胸を撫で下ろす。
「それにしても、この大学の学生は随分ステラのことを嫌っているようだな。……そんなに悪事を働いてきたのか?」
エドが尋ねてくる。
「そんなこと、知りませんよ……だって、私は1週間前以前の記憶が全く無いのですから」
「そうか……。ここ数日、ステラと一緒にいて考えていたことがあるんだ。何故、こんなにもステラは大学中の学生たちから嫌われているかって」
「あの〜……いくら何でもそれは言い過ぎではありませんか? 大学中なんて……」
しかし、エドは私の言葉に耳を貸さない。
「……俺がこの大学に留学生としてやってきたのは1ヶ月前なんだ」
「はぁ?」
いきなり、何を言い出すのだろう。
「そして、その時からステラ。君は大学内で全校生徒から嫌われていた。……多分」
ビシッと私を指してくるエド。
「ええ!? 全校生徒から!? それに何ですか? その多分っていうのは」
「多分というのは気にしなくていい。それにしても何故だと思う? ステラ」
「だから、私に理由を尋ねないでくださいってば。こっちが知りたいくらいなんですから。はぁ〜……もう、大学……辞めようかな……」
もしエドの言葉が本当だとしたら、そんなに嫌われているのに大学に通う意味がはたしてあるのだろうか?
「大学を辞める!? それは駄目だ! いくら女性とはいえ、知識や教養を身につけるのは大事なことだと思わないのか? 嫌われているというだけで、屈してどうする? そのために、俺がステラの側にいるんじゃないか? 例えステラがどんな悪女だろうと俺は味方だ。そのことは忘れないで欲しい」
そしてじっと真剣な目で見つめてくるエド。
「エド……」
「うん。何だい? ステラ」
「ひょっとして……まだ、私に食べ物を要求していません?」
「あ? もしかして分かった?」
「はぁ〜……やっぱりね……」
私は深いため息をついた――