「おはよう、ステラ。約束通り迎えに来たよ」
馬車から降りてきた青年は見事なプラチナブロンドの髪に緑色の瞳。通り過ぎれば振り返ってみたくなるような超絶イケメン男性だったのだ。
しかも見るからに高級そうな服を身につけている。
「……」
あまりのイケメンぶりに、私は呆けたまま口を開けて青年を見上げていた。
「どうしたんだ? ステラ。そんな顔して」
青年は笑いながら、私の額を人差し指で小突いてきた。
「ひゃあああああっ!」
イケメンに触られてしまった!
「な、な、何するんですかっ!」
額を押さえて青年を見上げる。
「何って……? ステラがぼんやりしているからだろう?」
何が嬉しいのか、青年はニコニコしながら私を見つめる。
「何処のどなたか知りませんが、どうして私の名前を知っているんですか!?」
「何処のどなたかって……あ、そうか」
すると青年はジャケットのポケットに手を突っ込むと何かを取り出した。
え? あれは……もしかしてウィッグ……?
青年はそれを頭に被ると、私に顔を近づけてきた。
「どうだ? これなら分かるだろう?」
その姿は……。
「え……エドさんですか!?」
「そう、正解。エドだよ。……正式に言うと、エドワード・フォン・ガレットだ」
「エドワード・フォン・ガレット……さん……」
すると彼は首を傾げる。
「う〜ん……どうもしっくりこないなぁ。やっぱりステラにはエドって呼んでもらおうかな。ついでに『さん』付けは無しで」
「エド……?」
「うん、それでいい。よし、それじゃ馬車に乗ろう」
エドはにっこり笑うと私に右手を差し出してきた。
「は、はぁ……」
戸惑いながらエドと一緒に乗り込むと、馬車はすぐに走り始めた。
「それで、ステラ。今日もおにぎりを持ってきてくれたんだろう?」
早速尋ねてくるエド。
「ええ、ちゃんと持ってきましたよ。おにぎりに、タコさんウィンナー。だし巻き卵に青菜の胡麻和えと、サツマイモの甘煮とプチトマトです」
これも私がレイミーに渡したレシピだ。
朝、夕の食事は洋食でも仕方ないが、お昼だけはどうしても和食が食べたくて無理やりお願いして作ってもらったのだ。
本当は自分で作ればよいのだろうが、「ステラお嬢様に厨房に立ってもらうわけにはいきません!」 と強く反対されていたからだ。
「へ〜。聞いたこと無い料理ばかりだ。それが全て、その中に入っているのかい?」
「ええ、お弁当ですからね」
大事そうに、バスケットをそっと撫でる。
「オベントウ……? オベントウって言うのか? うん、何だかいい響きだな。オベントウか……」
満足そうに、ウンウン頷くエド。
「そんなことよりも、エド。どうして、あんな格好をしていたんです?」
「あんな格好? あ、これのことかな?」
エドは再びポケットからウィッグを取り出す。
「この姿だと、色々な女性から付き纏われてしまって迷惑だからさ。今までもずっとそうだったけど、特にこの大学ではしつこい女性がいてね。しかもおかしなことを口走るんだ。『やっと、この世界のヒーローに出会えた』と言ってね」
うんざりした様子でため息をつくエド。
「え……? この世界のヒーロー……?」
まさか、ひょっとしてその人物は……?
「初めてこの大学に顔を出した日に偶然彼女に会ったんだよ。正門近くで誰か立ってると思ったら、突然倒れたんだよ。驚いて駆け寄って起こしてあげたら、何て言われたと思う?」
「さ、さぁ……?」
「『やっと、私達出会えましたね?』と言って、ニヤリと笑ったんだよ。もう、あの時は全身に鳥肌が立ったね」
余程恐ろしかったのか、エドはブルリと身体を震わせる。
「そうですか……」
もうその人物が誰なのか分かった気がする。
「今までも散々女性にしつこく付き纏われたことがあるけれど、あんな経験は初めてだったよ……それで、やむを得ず顔を隠すことにしたのさ。身なりもわざと汚いふりをしてね」
「アハハハ……それは大変でしたね」
「その人物って、誰だと思う?」
「カレンさんでしょう?」
「すごい! 即答の上、一発で当てるなんて!」
大げさに驚くエド。うん、それでも彼はイケメンだ。
「あんなに周囲に男を侍らせておきながら、俺にあんなことを言ってくるなんて頭がおかしいんじゃないかと思ったよ。それにしても良く分かったな? 何故だい?」
「ええ、勘というやつでしょうか……アハハハ」
笑って誤魔化す私。
間違いない……カレンも私とビンセント同様、魂を交換されたのだ。
ただし、カレンは何かを勘違いしているようだけれども――
馬車から降りてきた青年は見事なプラチナブロンドの髪に緑色の瞳。通り過ぎれば振り返ってみたくなるような超絶イケメン男性だったのだ。
しかも見るからに高級そうな服を身につけている。
「……」
あまりのイケメンぶりに、私は呆けたまま口を開けて青年を見上げていた。
「どうしたんだ? ステラ。そんな顔して」
青年は笑いながら、私の額を人差し指で小突いてきた。
「ひゃあああああっ!」
イケメンに触られてしまった!
「な、な、何するんですかっ!」
額を押さえて青年を見上げる。
「何って……? ステラがぼんやりしているからだろう?」
何が嬉しいのか、青年はニコニコしながら私を見つめる。
「何処のどなたか知りませんが、どうして私の名前を知っているんですか!?」
「何処のどなたかって……あ、そうか」
すると青年はジャケットのポケットに手を突っ込むと何かを取り出した。
え? あれは……もしかしてウィッグ……?
青年はそれを頭に被ると、私に顔を近づけてきた。
「どうだ? これなら分かるだろう?」
その姿は……。
「え……エドさんですか!?」
「そう、正解。エドだよ。……正式に言うと、エドワード・フォン・ガレットだ」
「エドワード・フォン・ガレット……さん……」
すると彼は首を傾げる。
「う〜ん……どうもしっくりこないなぁ。やっぱりステラにはエドって呼んでもらおうかな。ついでに『さん』付けは無しで」
「エド……?」
「うん、それでいい。よし、それじゃ馬車に乗ろう」
エドはにっこり笑うと私に右手を差し出してきた。
「は、はぁ……」
戸惑いながらエドと一緒に乗り込むと、馬車はすぐに走り始めた。
「それで、ステラ。今日もおにぎりを持ってきてくれたんだろう?」
早速尋ねてくるエド。
「ええ、ちゃんと持ってきましたよ。おにぎりに、タコさんウィンナー。だし巻き卵に青菜の胡麻和えと、サツマイモの甘煮とプチトマトです」
これも私がレイミーに渡したレシピだ。
朝、夕の食事は洋食でも仕方ないが、お昼だけはどうしても和食が食べたくて無理やりお願いして作ってもらったのだ。
本当は自分で作ればよいのだろうが、「ステラお嬢様に厨房に立ってもらうわけにはいきません!」 と強く反対されていたからだ。
「へ〜。聞いたこと無い料理ばかりだ。それが全て、その中に入っているのかい?」
「ええ、お弁当ですからね」
大事そうに、バスケットをそっと撫でる。
「オベントウ……? オベントウって言うのか? うん、何だかいい響きだな。オベントウか……」
満足そうに、ウンウン頷くエド。
「そんなことよりも、エド。どうして、あんな格好をしていたんです?」
「あんな格好? あ、これのことかな?」
エドは再びポケットからウィッグを取り出す。
「この姿だと、色々な女性から付き纏われてしまって迷惑だからさ。今までもずっとそうだったけど、特にこの大学ではしつこい女性がいてね。しかもおかしなことを口走るんだ。『やっと、この世界のヒーローに出会えた』と言ってね」
うんざりした様子でため息をつくエド。
「え……? この世界のヒーロー……?」
まさか、ひょっとしてその人物は……?
「初めてこの大学に顔を出した日に偶然彼女に会ったんだよ。正門近くで誰か立ってると思ったら、突然倒れたんだよ。驚いて駆け寄って起こしてあげたら、何て言われたと思う?」
「さ、さぁ……?」
「『やっと、私達出会えましたね?』と言って、ニヤリと笑ったんだよ。もう、あの時は全身に鳥肌が立ったね」
余程恐ろしかったのか、エドはブルリと身体を震わせる。
「そうですか……」
もうその人物が誰なのか分かった気がする。
「今までも散々女性にしつこく付き纏われたことがあるけれど、あんな経験は初めてだったよ……それで、やむを得ず顔を隠すことにしたのさ。身なりもわざと汚いふりをしてね」
「アハハハ……それは大変でしたね」
「その人物って、誰だと思う?」
「カレンさんでしょう?」
「すごい! 即答の上、一発で当てるなんて!」
大げさに驚くエド。うん、それでも彼はイケメンだ。
「あんなに周囲に男を侍らせておきながら、俺にあんなことを言ってくるなんて頭がおかしいんじゃないかと思ったよ。それにしても良く分かったな? 何故だい?」
「ええ、勘というやつでしょうか……アハハハ」
笑って誤魔化す私。
間違いない……カレンも私とビンセント同様、魂を交換されたのだ。
ただし、カレンは何かを勘違いしているようだけれども――