「そうか、そうか。やっとステラはあのろくでなしと婚約破棄する決心がついたのか」
夕食の席で、父はワインを片手に嬉しそうに笑った。ろくでなし……中々のことを言ってくれる。
「はい、お父様。記憶が曖昧になってから、どうやら目が覚めたようです。何故あんな最低男に一目惚れしたのか、今となっては不思議でなりません」
「そうよね。私も不思議だったもの。ステラほどの美人があんなクズと婚約したいと言ってきたときには耳を疑ったわ」
母も上機嫌で笑っている。
うん? クズ……?
今、クズと言っていたような気がするも、聞かなかったことにしよう。
「今頃、ロンド家では慌てふためいているに違いないわ。何しろあの手紙には……」
母が口にしかけた時、慌てた様子でフットマンが駆けつけてきた。
「旦那様! 夕食時に申し訳ございません!」
「騒々しいな。一体何だというのだ?」
4杯目のワイングラスに手を伸ばしながら父が尋ねる。
「は、はい。実はロンド伯爵が……その、エイドリアン様と御一緒に訪ねていらっしゃったのですが……?」
フットマンは私にチラリと目を向ける。
「何? 伯爵が来たのか? よし、ではワインを空けたら行こう」
父はまるで水のように残りのワインを飲み干し……てしまった!
「え? お父様?」
「まぁ、ついに来たのね?」
母もワイングラスに手を伸ばすと、煽るように一気飲みする。
「ちょ、ちょっと。お母様まで?」
一体どういうことだろう? これから大事な話があるというのに、アルコールを飲むなんて。
「さて、行こうか?」
「そうね」
父と母が立ち上がり、私に視線を移す。
「ステラ、お前はどうする?」
「どうするって……私のことなので行くしか無いでしょう?」
何より、アルコールを飲んでいる2人がまともに話をできるか心配だ。
「よし、では三人で奴らを迎え撃つぞ!」
……既に父は酔っているのかも知れない……。
非常に不安を感じながら、私は両親の後をついて行くことにした。
****
応接室に行くと、頭がツルリと剥げ上がった小太りの中年男性とエイドリアンが固い表情でソファに座って待っていた。
「待たせたかな?」
父が声をかけながら中に入ると、2人は素早くソファから立ち上がった。
エイドリアンは相当親に叱られたのか、下を向いて両手を握りしめている。
「さぁて……要件は何だ?」
父がソファに座ったので、私も母も無言で座る。
「大変申し訳ございませんでした!」
エイドリアンの父が突然頭を下げてきた。
「「「……」」」
「と、父さん……」
エイドリアンが驚いた様子で父親を見る。
「ほら! お前もとっとと頭を下げろ!」
父親はエイドリアンの頭に手を乗せると、無理やりグイッと頭を下げさせる。
その様子を見て、思わず自分の口角が上がる。
ふふふ。いいきみだ。
社畜になったような気持ちを存分に味わうといい。
隣を見ると、父も母も楽しそうにその様子を見つめている。
う〜ん……血の繋がり? は無いものの……何故か似たようなものを感じてしまう。
さて、どんな風に私に謝ってくるのだろうか……。期待して待つ私。
すると……。
「どうか……会社を見捨てないでください!! アボット伯爵に見捨てられたら……我が会社はもうお終いです!!」
え? 会社?
予想外の言葉がエイドリアンの父親から飛び出してきた――
夕食の席で、父はワインを片手に嬉しそうに笑った。ろくでなし……中々のことを言ってくれる。
「はい、お父様。記憶が曖昧になってから、どうやら目が覚めたようです。何故あんな最低男に一目惚れしたのか、今となっては不思議でなりません」
「そうよね。私も不思議だったもの。ステラほどの美人があんなクズと婚約したいと言ってきたときには耳を疑ったわ」
母も上機嫌で笑っている。
うん? クズ……?
今、クズと言っていたような気がするも、聞かなかったことにしよう。
「今頃、ロンド家では慌てふためいているに違いないわ。何しろあの手紙には……」
母が口にしかけた時、慌てた様子でフットマンが駆けつけてきた。
「旦那様! 夕食時に申し訳ございません!」
「騒々しいな。一体何だというのだ?」
4杯目のワイングラスに手を伸ばしながら父が尋ねる。
「は、はい。実はロンド伯爵が……その、エイドリアン様と御一緒に訪ねていらっしゃったのですが……?」
フットマンは私にチラリと目を向ける。
「何? 伯爵が来たのか? よし、ではワインを空けたら行こう」
父はまるで水のように残りのワインを飲み干し……てしまった!
「え? お父様?」
「まぁ、ついに来たのね?」
母もワイングラスに手を伸ばすと、煽るように一気飲みする。
「ちょ、ちょっと。お母様まで?」
一体どういうことだろう? これから大事な話があるというのに、アルコールを飲むなんて。
「さて、行こうか?」
「そうね」
父と母が立ち上がり、私に視線を移す。
「ステラ、お前はどうする?」
「どうするって……私のことなので行くしか無いでしょう?」
何より、アルコールを飲んでいる2人がまともに話をできるか心配だ。
「よし、では三人で奴らを迎え撃つぞ!」
……既に父は酔っているのかも知れない……。
非常に不安を感じながら、私は両親の後をついて行くことにした。
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応接室に行くと、頭がツルリと剥げ上がった小太りの中年男性とエイドリアンが固い表情でソファに座って待っていた。
「待たせたかな?」
父が声をかけながら中に入ると、2人は素早くソファから立ち上がった。
エイドリアンは相当親に叱られたのか、下を向いて両手を握りしめている。
「さぁて……要件は何だ?」
父がソファに座ったので、私も母も無言で座る。
「大変申し訳ございませんでした!」
エイドリアンの父が突然頭を下げてきた。
「「「……」」」
「と、父さん……」
エイドリアンが驚いた様子で父親を見る。
「ほら! お前もとっとと頭を下げろ!」
父親はエイドリアンの頭に手を乗せると、無理やりグイッと頭を下げさせる。
その様子を見て、思わず自分の口角が上がる。
ふふふ。いいきみだ。
社畜になったような気持ちを存分に味わうといい。
隣を見ると、父も母も楽しそうにその様子を見つめている。
う〜ん……血の繋がり? は無いものの……何故か似たようなものを感じてしまう。
さて、どんな風に私に謝ってくるのだろうか……。期待して待つ私。
すると……。
「どうか……会社を見捨てないでください!! アボット伯爵に見捨てられたら……我が会社はもうお終いです!!」
え? 会社?
予想外の言葉がエイドリアンの父親から飛び出してきた――