自分の手の平をじっと見つめていると、突然エドが私の額に手をあててきた。
「ちょ、ちょっと……何するんですか?」
「う〜ん……熱はないようだな……」
エドは自分の額にも手をあてながら首をひねる。
「熱なんかありませんよ。一体何なんですか?」
エドの手を押しのける私。
「いやぁ……突然自分の手の平をじっと見つめるものだから、熱で頭がどうにかなってしまったのかと思ったんだよ。何しろステラは……ほら、アレだろう? 記憶障害を起こしているんだものな」
「だから、記憶障害じゃなくて記憶喪失ですってば……あの、ところでつかぬことを聞きますが、その魂の交換っていうのは本当に出来るのでしょうか?」
「え? 出来ると思ったからこの科目を履修したんじゃないのか? あ……違うか。婚約者がこの授業を選択しているからだったんだっけ?」
エドが出入り口を見つめるので、私も視線を移すと丁度カレンがエイドリアン達に囲まれながら教室に入ってきた。
エイドリアンは教室を見渡し……私を見つけると鋭い眼差しを向け、席に着席した。
「うわぁ……」
なんてイヤな男なのだろう。うんざりした気持ちになるも、何故かエドは楽しそうだ。
「見たか、ステラ。君の婚約者は随分と君を気にかけているようだ」
「は? 何処がですか? 気にかけているではなく、目の敵にしているの間違いじゃないですか?」
「どれだって、相手を気にしているのだから似たようなものじゃないか」
「何処が似てるんですか? 偉い違いですよ」
抗議すると、エドに制止された。
「そんな細かいことはいちいち気にしなくていい。問題なのは嫌われているか、好かれているかじゃない。肝心なのは、あの婚約者がわざわざこの広い教室からステラを捜し出して睨みつけたってことだ。それだけ君の存在を意識しているってことだろう?」
物は言いようだ。けれど……。
「敵意を向けるために意識されたって嬉しくも何とも無いですよ。全く、他人事だと思って無責任な」
「何言ってるんだ? 他人事だと思うはず無いだろう? 何しろ俺とステラは立派な友人同士なんだから」
「は……?」
何故こんな不毛な話を真剣に語り合わなければならないのだろう。
「そんなことよりも、まずは先程の質問に答えてくださいよ。魂の交換というのは本当に可能なのですか?」
「う〜ん……俺は専門家じゃないからな……だが、過去に魂の交換が行われた、という事例があるらしい……と、聞いている」
「本当ですか!?」
「だが、俺は授業でそう習っただけだから真実はどうかは知らないぞ。どうやら互いに条件が揃えば、魂の交換は可能だと言ってたな。どうせ、今から授業が始まるんだ。じっくり聞いてみたらどうだ? フワァアア……」
突然エドは欠伸をし始めた。
「ステラ。悪いが授業の間、眠らせてもらうよ。眠くて起きているのが辛くてね。それで授業が終わったら起こして欲しい。 くれぐれも置いて行かないでくれよ? だって俺たち親友だよな?」
「分かりましたよ……起こせばいいんですよね? 起こせば」
「そう、そう。よろしくな」
そして彼は机に伏すと、あっという間に眠ってしまった……ようだ。
何しろボサボサ前髪のせいで、彼の目元が殆ど見えないのだから。
「ふぅ……全く、呑気な人だなぁ……」
こちらはステラの記憶もなく、エイドリアン達に目をつけられているというのに。
でも、『魂の交換』か……。互いの条件が揃えば交換が可能ということは、元に戻すことも可能だということなのだろう。
別に社畜に戻りたいわけではないけれども、この世界は私の居場所ではない。
戻れるものなら、戻ったほうが良いだろう。
すると、そこへ教授らしき人物が教室に現れた。
「これは真面目に授業を聞く必要があるわね……」
私は背筋を伸ばし、真面目に授業を聞く姿勢を取った――
「ちょ、ちょっと……何するんですか?」
「う〜ん……熱はないようだな……」
エドは自分の額にも手をあてながら首をひねる。
「熱なんかありませんよ。一体何なんですか?」
エドの手を押しのける私。
「いやぁ……突然自分の手の平をじっと見つめるものだから、熱で頭がどうにかなってしまったのかと思ったんだよ。何しろステラは……ほら、アレだろう? 記憶障害を起こしているんだものな」
「だから、記憶障害じゃなくて記憶喪失ですってば……あの、ところでつかぬことを聞きますが、その魂の交換っていうのは本当に出来るのでしょうか?」
「え? 出来ると思ったからこの科目を履修したんじゃないのか? あ……違うか。婚約者がこの授業を選択しているからだったんだっけ?」
エドが出入り口を見つめるので、私も視線を移すと丁度カレンがエイドリアン達に囲まれながら教室に入ってきた。
エイドリアンは教室を見渡し……私を見つけると鋭い眼差しを向け、席に着席した。
「うわぁ……」
なんてイヤな男なのだろう。うんざりした気持ちになるも、何故かエドは楽しそうだ。
「見たか、ステラ。君の婚約者は随分と君を気にかけているようだ」
「は? 何処がですか? 気にかけているではなく、目の敵にしているの間違いじゃないですか?」
「どれだって、相手を気にしているのだから似たようなものじゃないか」
「何処が似てるんですか? 偉い違いですよ」
抗議すると、エドに制止された。
「そんな細かいことはいちいち気にしなくていい。問題なのは嫌われているか、好かれているかじゃない。肝心なのは、あの婚約者がわざわざこの広い教室からステラを捜し出して睨みつけたってことだ。それだけ君の存在を意識しているってことだろう?」
物は言いようだ。けれど……。
「敵意を向けるために意識されたって嬉しくも何とも無いですよ。全く、他人事だと思って無責任な」
「何言ってるんだ? 他人事だと思うはず無いだろう? 何しろ俺とステラは立派な友人同士なんだから」
「は……?」
何故こんな不毛な話を真剣に語り合わなければならないのだろう。
「そんなことよりも、まずは先程の質問に答えてくださいよ。魂の交換というのは本当に可能なのですか?」
「う〜ん……俺は専門家じゃないからな……だが、過去に魂の交換が行われた、という事例があるらしい……と、聞いている」
「本当ですか!?」
「だが、俺は授業でそう習っただけだから真実はどうかは知らないぞ。どうやら互いに条件が揃えば、魂の交換は可能だと言ってたな。どうせ、今から授業が始まるんだ。じっくり聞いてみたらどうだ? フワァアア……」
突然エドは欠伸をし始めた。
「ステラ。悪いが授業の間、眠らせてもらうよ。眠くて起きているのが辛くてね。それで授業が終わったら起こして欲しい。 くれぐれも置いて行かないでくれよ? だって俺たち親友だよな?」
「分かりましたよ……起こせばいいんですよね? 起こせば」
「そう、そう。よろしくな」
そして彼は机に伏すと、あっという間に眠ってしまった……ようだ。
何しろボサボサ前髪のせいで、彼の目元が殆ど見えないのだから。
「ふぅ……全く、呑気な人だなぁ……」
こちらはステラの記憶もなく、エイドリアン達に目をつけられているというのに。
でも、『魂の交換』か……。互いの条件が揃えば交換が可能ということは、元に戻すことも可能だということなのだろう。
別に社畜に戻りたいわけではないけれども、この世界は私の居場所ではない。
戻れるものなら、戻ったほうが良いだろう。
すると、そこへ教授らしき人物が教室に現れた。
「これは真面目に授業を聞く必要があるわね……」
私は背筋を伸ばし、真面目に授業を聞く姿勢を取った――