「本当に目付きが悪いわ……これがもう少し垂れ目だったら、本当に美少女なのに」
自分のつり上がった目尻を指で下げてみた時。
――コンコン
部屋にドアノッカーの音が響き渡った。きっと私の世話をするためにメイドがやってきたのだろう。
「今朝もまた来たんだ……本当に手伝いなんか要らないのに……」
ため息をつきながら扉に向かい、無言で開けると悲鳴が上がった。
「キャッ！！」
扉の前には私と同年代に見えるメイドが怯えた様子で立っていた。まさか扉が開かれるとは思わなかったのだろう。
「え……と……おはよう……？」
挨拶は朝の基本、自分から声をかけた。初日に敬語を使って話した時、その場にいた全員に怯えられてしまったので敬語は封印。
「あ！ お、おはようございます！ ステラお嬢様！」
ステラ……ステラ・アボット。それが今の私の名前だ。彼女の身分は伯爵令嬢。日本人の私にはピンとこないが、かなり身分は高いようだ。
そして、質が悪いことに……どうやらこのステラという令嬢は外見だけでなく、性格も性悪らしい。
その証拠が、今目の前にいるメイドだ。
余程私が怖いのだろう。小刻みに震えながら俯いている。
「もしかしなくても……私の朝の支度の手伝いに来たの？」
「は、はい……そうです……が」
ビクビクしながら返事をされると、私はステラでもないのに自分が相当酷い人間に思えてくる。こんなに自分を怖がる人にお世話されるなんて、お互いの為に良くないだろう。
そこで、できるだけ温和に話しかけた。
「あの、あなたの名前教えてもらえる？」
「え？ わ、私の名前ですか……？ もしや、何かステラお嬢様のお気に触るようなことをしてしまったでしょうか！？」
既に涙目になっているメイド。
「違うってば。そうじゃなくて……貴女が誰か分からないから名前を教えてもらいたいだけなんだけど？」
「私の名前は……エレンです……」
茶髪のボブヘアカットのエレンは震えながら名を名乗る。
「エレンね。それじゃ、エレンに言伝をしたいのだけどいい？」
「言伝ですか……？ 何でしょう？」
「これからは、私の朝の支度の手伝いは不要。自分のことは自分で出来るから、もう来なくていいと伝えてくれる？」
「え！ そ、それを……新人の私に伝えろと仰るのですか！？」
「え？ そうだけど……？」
何をそんなに驚くのだろう？ 私はただ伝言を頼んでいるだけなのに。
「無理です！ わ、私は一介のメイドに過ぎません……そういうお話はメイド長を通していただけないでしょうか……」
ガタガタ震えるエレン。何もそこまで怯える必要は無いのに。だけど、自分の社畜時代を思い出す。
同じ部署で発注ミスがあり（私の責任では決して無い）、たまたまクレームの電話に新人の私が出てしまった。相手は怒りの矛先を私にぶつけ、挙げ句に「お前では話にならない。上の人間を出せ」と言ってキレまくっていたっけ……
その時のことを思い出し、肩をすくめた。
「……そう。それなら後でメイド長に私が会いたがっていたと伝えておいてくれる？」
「はい、わっ、分かりました！」
「それで、今朝の手伝いはいいからね？」
「え？ あ、あの！」
「大丈夫、私の朝の手伝いはしてきたと報告していいから」
それだけ告げると私は扉を閉めた。
「……さて、それじゃ朝の支度を始めようかな……」
そして私は大きすぎるクローゼットに向かった――
自分のつり上がった目尻を指で下げてみた時。
――コンコン
部屋にドアノッカーの音が響き渡った。きっと私の世話をするためにメイドがやってきたのだろう。
「今朝もまた来たんだ……本当に手伝いなんか要らないのに……」
ため息をつきながら扉に向かい、無言で開けると悲鳴が上がった。
「キャッ！！」
扉の前には私と同年代に見えるメイドが怯えた様子で立っていた。まさか扉が開かれるとは思わなかったのだろう。
「え……と……おはよう……？」
挨拶は朝の基本、自分から声をかけた。初日に敬語を使って話した時、その場にいた全員に怯えられてしまったので敬語は封印。
「あ！ お、おはようございます！ ステラお嬢様！」
ステラ……ステラ・アボット。それが今の私の名前だ。彼女の身分は伯爵令嬢。日本人の私にはピンとこないが、かなり身分は高いようだ。
そして、質が悪いことに……どうやらこのステラという令嬢は外見だけでなく、性格も性悪らしい。
その証拠が、今目の前にいるメイドだ。
余程私が怖いのだろう。小刻みに震えながら俯いている。
「もしかしなくても……私の朝の支度の手伝いに来たの？」
「は、はい……そうです……が」
ビクビクしながら返事をされると、私はステラでもないのに自分が相当酷い人間に思えてくる。こんなに自分を怖がる人にお世話されるなんて、お互いの為に良くないだろう。
そこで、できるだけ温和に話しかけた。
「あの、あなたの名前教えてもらえる？」
「え？ わ、私の名前ですか……？ もしや、何かステラお嬢様のお気に触るようなことをしてしまったでしょうか！？」
既に涙目になっているメイド。
「違うってば。そうじゃなくて……貴女が誰か分からないから名前を教えてもらいたいだけなんだけど？」
「私の名前は……エレンです……」
茶髪のボブヘアカットのエレンは震えながら名を名乗る。
「エレンね。それじゃ、エレンに言伝をしたいのだけどいい？」
「言伝ですか……？ 何でしょう？」
「これからは、私の朝の支度の手伝いは不要。自分のことは自分で出来るから、もう来なくていいと伝えてくれる？」
「え！ そ、それを……新人の私に伝えろと仰るのですか！？」
「え？ そうだけど……？」
何をそんなに驚くのだろう？ 私はただ伝言を頼んでいるだけなのに。
「無理です！ わ、私は一介のメイドに過ぎません……そういうお話はメイド長を通していただけないでしょうか……」
ガタガタ震えるエレン。何もそこまで怯える必要は無いのに。だけど、自分の社畜時代を思い出す。
同じ部署で発注ミスがあり（私の責任では決して無い）、たまたまクレームの電話に新人の私が出てしまった。相手は怒りの矛先を私にぶつけ、挙げ句に「お前では話にならない。上の人間を出せ」と言ってキレまくっていたっけ……
その時のことを思い出し、肩をすくめた。
「……そう。それなら後でメイド長に私が会いたがっていたと伝えておいてくれる？」
「はい、わっ、分かりました！」
「それで、今朝の手伝いはいいからね？」
「え？ あ、あの！」
「大丈夫、私の朝の手伝いはしてきたと報告していいから」
それだけ告げると私は扉を閉めた。
「……さて、それじゃ朝の支度を始めようかな……」
そして私は大きすぎるクローゼットに向かった――
